社長と現場の間に「見えない壁」があるときの診断チェック|本音が上がらない組織の変え方

社長と現場の間に「見えない壁」があるときの診断チェック|本音が上がらない組織の変え方

会議では「問題ありません」と言われる。しかし、後になって退職意向、顧客からの不満、部門間の対立、若手の疲弊が見えてくる。社長として「なぜもっと早く言ってくれなかったのか」と感じたことはないでしょうか。

2代目・3代目社長の組織では、社長と現場の間に「見えない壁」ができることがあります。社員が社長を嫌っているとは限りません。社長に心配をかけたくない、評価を下げたくない、言っても変わらないと思っている、誰に言えばよいか分からない。こうした小さな遠慮が積み重なると、表向きは問題なく動いているように見えても、現場の本音や兆しが経営に届かなくなります。

この壁を取り除くために必要なのは、社長が「もっと本音を言ってください」と呼びかけることだけではありません。社員が話しても大丈夫だと感じる場をつくり、聞いた内容が扱われる経験を重ね、社長の意図と現場の実態をつなぐ仕組みが必要です。

この記事では、見えない壁がある組織のサイン、10項目の診断チェック、社長が始める対話の方法、本音を組織改善につなげる進め方を解説します。

この記事で分かること
「社員の本音が分からない」という曖昧な不安を、観察できるサインと具体的な対話へ変え、社長と現場の意図が通じ合う組織をつくる第一歩を紹介します。

「見えない壁」とは何か

見えない壁とは、社長と現場の間で、必要な情報・不安・意見が行き来しなくなっている状態です。組織図上の上下関係だけが原因ではありません。過去に意見を出しても変わらなかった経験、忙しい社長に遠慮する空気、失敗を話すと責められる感覚、上司が情報を途中で止める構造など、複数の要因で生まれます。

壁がある組織では、社員が沈黙していること自体が問題ではありません。課題を感じたときに、誰かが早い段階で話せるか、話された内容が検討されるか、次に何をするかが共有されるかが重要です。

表面上は問題なさそうに見える状態 見えない壁がある場合に起きていること
会議が短時間で終わる 議論が深まらず、社長への報告だけで終わっている
社員が社長の方針にいつも賛成する 不安や反対意見を言っても無駄だと思っている
問題はいつも大きくなってから分かる 小さな違和感を上げる経路がない、または使われていない
部門長の報告は整っている 現場の困りごとや若手の声が途中で薄まっている
退職者が出てから初めて不満を知る 日常の対話で本音を拾えていない

10項目で確認する|社長と現場の間に壁があるサイン

次の項目に当てはまるものがあれば、すぐに組織が壊れているという意味ではありません。ただし、当てはまる項目が多いほど、社長と現場の対話の仕組みを見直す余地があります。

チェック項目 はい・いいえ
1. 社員に会社の今期方針を聞くと、答えが部署ごと・人ごとにばらばらになる
2. 会議では問題がないと言われるが、会議後に個別の不満や愚痴を聞く
3. 社長が現場の困りごとを知るのは、退職やクレームの直前・直後である
4. 若手社員が会議で意見を言うことがほとんどない
5. マネージャーが部下の状況を、数字以外では説明できない
6. 「言ってもどうせ変わらない」という言葉を聞いたことがある
7. 社長が現場へ直接聞くと、必要以上に良い返事だけが返ってくる
8. 部門間で「相手が分かってくれない」という不満が続いている
9. 失敗やトラブルの共有が、原因追及の場になりやすい
10. 社長自身が、社員が何を大切にして働いているのか自信を持って言えない

チェックが多かった場合に、最初にすべきこと

このチェックは、社員を評価するためのものではありません。社長・マネージャー・現場の誰が悪いかを探すためでもありません。まずは「現場に聞く前に、社長が答えを決めていないか」「話しても変わらない経験を積ませていないか」「数字だけで組織を見ていないか」を振り返る材料として使います。

既存の「2代目・3代目社長のための組織課題チェックリスト」では、承継後の組織課題をより広い20項目で整理できます。見えない壁だけでなく、マネージャー育成、仕組みづくり、社長自身の悩みも含めて確認したい場合にご活用ください。

本音が上がらない組織で、社長がやりがちな3つの誤解

誤解1:「意見がないのは、現場が納得しているからだ」

沈黙は納得とは限りません。社員が方針を理解していない、忙しくて考える余裕がない、立場上言えない、過去に言っても何も変わらなかったという可能性があります。

会議で賛成が得られたときは、「分からない点や、現場で難しそうな点はありますか」と一段深く聞いてください。その場で答えが出なくても、「後で個別に考えを聞かせてください」と伝えるだけで、意見を出す入口になります。

誤解2:「社長が直接聞けば、本音が聞ける」

社長が現場へ足を運び、直接話すことは大切です。ただし、社長に対して本音を言うことには心理的な負担があります。特に、人事評価や日々の仕事に影響する相手に対しては、社員は無意識に言葉を選びます。

社長が直接聞く場と、マネージャーが聞く場、第三者が聞く場には、それぞれ役割があります。社長は未来の方向性と、自分が大切にしていることを伝える。マネージャーは日々の仕事の障害を把握する。第三者は、社内では言いにくい本音や立場の違いを整理する。全てを社長一人で担う必要はありません。

誤解3:「不満を聞くと、組織が悪い方向へ向かう」

本音を聞くと、課題が急に増えたように見えることがあります。しかし、多くの場合、課題はすでに存在しており、見えるようになっただけです。問題を聞かないことで短期的な平穏は保てても、課題はより大きくなってから表面化します。

重要なのは、全ての不満を解決することではありません。聞いた内容を整理し、「今すぐ扱うこと」「中長期で扱うこと」「今回は扱わないこと」を決め、その理由を伝えることです。社員は、自分の意見が必ず採用されることより、きちんと扱われたと感じることを求めています。

壁を越えるために、社長が最初に始める対話

いきなり全社員アンケートや大規模な組織改革から始める必要はありません。まずは、社長が5〜8人程度の社員と、一対一または少人数で話す機会をつくります。古参社員、マネージャー、若手、異なる部門の社員を含めると、組織の見え方が変わります。

対話で使う6つの質問

質問 目的
「今、会社が目指している方向をどう理解していますか」 社長の意図がどう届いているかを知る
「今の仕事で、顧客や仲間のために良くしたいことは何ですか」 現場の前向きな問題意識を把握する
「進めにくいこと、無駄だと感じることはありますか」 業務・制度・関係性の障害を見つける
「変わることについて、心配なことは何ですか」 反発の背景にある不安を知る
「今までのやり方で、残すべき良さは何ですか」 組織の資産と古参社員の誇りを把握する
「社長や会社に、今後どんなことを期待しますか」 信頼回復の優先順位を知る

この対話でのルールは三つです。第一に、社長は途中で結論を急がないこと。第二に、話した内容を個人が特定される形で広めないこと。第三に、聞いた後の次の行動を必ず伝えることです。

「聞くだけ」で終わらせないための4ステップ

本音を聞く場をつくっても、何も変わらなければ、次から社員は話さなくなります。対話を組織づくりにつなげるためには、聞いた内容を行動へ移し、その経過を共有します。

ステップ 行うこと 社員に伝えること
1 聞いた内容を、個人が特定されない形でテーマ別に整理する 「多くの方から、こうした声がありました」
2 社長・マネージャーで、最初に扱うテーマを一つ選ぶ 「今月は、この課題から改善します」
3 小さく試し、担当・期限・確認方法を決める 「誰が、いつまでに、どう変えるか」
4 結果と次の対応を共有する 「ここは改善できた/ここは時間が必要です」

たとえば「会議で意見が出ない」という声が多い場合、最初から会議制度を全面改定する必要はありません。次回の会議で、事前に論点を一つ共有し、参加者全員が一度は意見を出す時間をつくる。会議の最後に、出た意見を誰が検討するかを決める。こうした小さな変更から始めます。

第三者が入ることで、対話が進みやすくなる場面

社内の対話だけでは、本音が出にくい場合があります。たとえば、社長が直接聞くと社員が良い返事しかしない、マネージャー自身が課題の一部になっている、古参社員と若手の間に遠慮や対立がある、といった場面です。

第三者が入る価値は、社長の代わりに正解を決めることではありません。社内の評価や利害から距離を置き、現場の言葉を丁寧に聞き、社長のビジョンと照らして整理することです。誰かを責めるのではなく、「この組織では、何が起きているのか」「双方が納得して進むために何が必要か」を見える形にします。

CsMの組織づくり・組織改善支援では、現場の本音を1on1で丁寧にすくい上げ、社長の目指す方向性とすり合わせながら、右腕(ネクストリーダー)育成まで伴走します。1

まとめ|本音が上がる組織は、聞かれる前提ではなく「扱われる実感」でできる

社長と現場の見えない壁は、一度の面談やイベントでなくなるものではありません。社長が現場の受け止めを知ろうとし、社員が不安や意見を話し、それが適切に扱われ、次の行動が共有される。この循環が続くことで、少しずつ壁が低くなります。

まずは、社長が答えを用意せずに聞く時間をつくることから始めてください。そして、全てを一度に変えようとせず、聞いた声の中から一つを選んで改善し、その結果を共有します。小さな約束が守られる経験が、組織の信頼をつくります。

現場の本音を知り、社長のビジョンを組織の力に変えたい2代目・3代目社長の方へ
株式会社CsMは、社長と現場の間にある見えない壁を整理し、双方が納得して動ける組織の形を共につくります。課題がまだ言語化できていない段階でも、2代目・3代目社長向け 組織づくり・組織改善 超伴走型プランをご覧のうえ、無料相談をご利用ください。

参考文献

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