次世代リーダーは誰だ? 営業組織の未来を託せる人材を見極める7つの視点

「今の営業組織は、特定のエース社員の頑張りで何とか成り立っている」 「そのエースが退職したら、一気に売上が落ちるのではないか」 「将来、組織を任せられるリーダーがなかなか育たない」

多くの経営者様や営業責任者様が、こうした「人」に関する悩みを抱えていらっしゃいます。営業組織の持続的な成長を考えたとき、今の成果を支えているエース社員に「次も頼む」と期待をかけるのは自然なことです。

しかし、「優れた営業担当者(プレイヤー)」が、必ずしも「優れた指導者(リーダー)」になるとは限りません。

トップセールスとして成果を出す能力と、チームを率いてメンバーを育て、組織全体の成果を底上げする能力は、求められる性質が異なります。個人の成果を追求することに長けた方が、他者の育成やチーム全体の運営に興味を持てないケースも少なくありません。

むしろ、現在はそこまで目立った成果は出していなくても、組織の「未来」を託すにふさわしい、優れたポテンシャルを秘めたメンバーが、現場には必ずいるはずです。

では、その「ポテンシャル」を、私たちはどう見抜けばよいのでしょうか。 本日は、日々の営業成績や目先の数字だけでは見えてこない、次世代のリーダー候補を見極めるための「7つのチェックポイント」をご紹介します。

チェックポイント1: 「Why(なぜ)」を考える力を持っているか

多くの営業担当者は、上司から与えられた目標(KGI)や行動指標(KPI)を「What(何を)」として受け止め、それを達成するために「How(どうやって)」動くかに集中します。これは、担当者として非常に重要な能力です。

しかし、リーダー候補として注目すべきは、その一歩先、「Why(なぜ)」を考える力を持っているかどうかです。

  • 「なぜ、今月はこの目標数値なのか?」
  • 「なぜ、当社はこの顧客層をターゲットにしているのか?」
  • 「なぜ、この営業プロセスが決められているのか?」

この「なぜ」を考える力は、単なる「やらされ仕事」から脱却し、会社の戦略や方針を自分事として理解しようとする姿勢の表れです。

もちろん、この「なぜ」が、単なる批判や不満(例:「こんな目標、無理に決まっている」)で終わっていては意味がありません。 注目すべきは、その「なぜ」を、「会社は、顧客に、社会に、どう貢献しようとしているのか」という大きな視点で理解しようと努め、その上で「であれば、自分(たち)はこう動くべきではないか」と、行動に結びつけようとするメンバーです。

こうしたメンバーは、将来リーダーになった際、会社の方針を自分の言葉でチームに説明し、メンバーを納得させ、同じ方向へ導いていくことができます。

チェックポイント2: 失敗を「分析の材料」にできるか

営業活動に失敗はつきものです。重要な商談で失注したり、顧客からクレームを受けたりすることもあるでしょう。

ここで注目すべきは、その「失敗」への向き合い方です。

  • Aさん: 失敗を隠そうとする。あるいは、「顧客のタイミングが悪かった」「競合の条件が良すぎた」と、外的要因のせいにしてすぐに忘れてしまう。
  • Bさん: 失敗を正直に報告する。そして、「何が足りなかったのか」「どのプロセスに問題があったのか」「次に同様のケースでどうすべきか」を、客観的に分析し、自分の言葉で説明しようとする。

どちらがリーダーの素質があるかは、明らかでしょう。 Bさんのようなメンバーは、失敗を「学習の機会」として捉えています。 失敗という事実に感情的になるのではなく、次に活かすための「分析の材料」として冷静に扱えるのです。

こうした姿勢を持つメンバーは、自分がリーダーになった際も、チームの失敗を感情的に責めるのではなく、「なぜそうなったのか」「どうすれば繰り返さないか」を冷静に分析し、チーム全体の学びへと変えていくことができます。

チェックポイント3: 周囲(他人)の成功や成長に関心があるか

自分の営業数字にしか興味がない、というメンバーは少なくありません。しかし、リーダーは「個人の成果」ではなく「チームの成果」に責任を持つ立場です。

日常の業務の中で、以下のような行動が見られるメンバーはいないでしょうか。

  • 自分の仕事が早く終わったら、残業している同僚に「何か手伝うことはありますか?」と自然に声をかけている。
  • 後輩が商談準備で悩んでいる様子を見て、「ちょっと話聞こうか?」とサポートしている。
  • 同僚が契約を取ってきたら、自分のことのように喜び、「どうやって成功したのか」を積極的に学ぼうとしている。

こうした行動は、「自分」だけでなく「周囲」に関心を向けることができる証拠です。彼らは、他者の成功や成長を支援することに、喜びややりがいを感じられる素質を持っています。

これは、将来チームを持った際に、メンバーの育成やサポートを「面倒な仕事」ではなく「重要な役割」として前向きに取り組めるかどうかに直結します。

チェックポイント4: 情報を「共有」し「整理」する習慣があるか

個人の営業担当者の中には、自分が苦労して手に入れたノウハウや顧客情報を、あえて周囲に共有せず「自分だけの武器」として抱え込む方がいます。いわゆる「属人化」です。

確かに、短期的にはそれが個人の成果につながるかもしれません。しかし、組織全体で見たとき、そのノウハウは個人の退職とともに失われるリスクをはらんでいます。

リーダー候補として注目すべきは、むしろ逆の行動を取るメンバーです。

  • 顧客から得た有益な情報(業界の動向、競合の動きなど)を、すぐにチームのチャットや日報で共有している。
  • 自分が成功した商談のトークスクリプトや提案資料を、他のメンバーも使えるように整理し、共有フォルダにアップしている。
  • 「あの件、どうなってる?」と聞かれる前に、関係者への進捗報告を欠かさない。

こうしたメンバーは、情報が「個人」に留まることのリスクと、「組織」で共有することの価値を、感覚的に理解しています。 彼らは、将来的にチームの「仕組み」を作る側に回ったとき、特定の個人の頑張りに頼るのではなく、誰もが一定の成果を出せるような情報共有のルールやプロセスを構築する力になってくれます。

チェックポイント5: 変化を「面倒事」ではなく「試す機会」と捉えるか

新しい営業支援ツール(SFA/CRM)の導入、営業プロセスの変更、新しい評価制度の開始……。会社は常に変化を求められます。

こうした「変化」に対して、多くのメンバーは少なからず抵抗感を示します。 「今のやり方でうまくいっているのに、なぜ変える必要があるのか」 「新しいことを覚えるのが面倒だ」

しかし、中にはこうした変化を前向きに捉えるメンバーもいます。

  • 「この新しいツールを使うと、何が便利になるんだろう?」
  • 「まずは自分が試してみて、使いこなせるようになろう」

彼らは、変化を「面倒事」や「脅威」としてではなく、「新しい試み」や「成長の機会」として捉える柔軟性を持っています。

市場や顧客のニーズが目まぐるしく変わる現代において、こうした変化への柔軟性(あるいは学習意欲)は、リーダーにとって非常に重要な資質です。彼らは、チームが新しい挑戦に直面したとき、抵抗勢力になるのではなく、むしろ率先して変化を受け入れ、チームを牽引する存在になるでしょう。

チェックポイント6: 自分の「強み」と「弱み」を客観視できているか

「自分は何が得意で、何が苦手か」 「自分はどのような状況で最も力を発揮できるか」

こうした「自己認識」の深さも、リーダーのポテンシャルを測る上で重要な視点です。

トップセールスの中には、感覚や勢いで成果を出してきたため、自分が「なぜ売れるのか」をうまく説明できない方がいます。また、自分のやり方が絶対だと信じ、弱みを認められない方もいます。 こうした方がリーダーになると、自分の成功体験を部下に押し付け、「なぜできないんだ」と、感覚的な指導に終始してしまう危険があります。

一方で、ポテンシャルのあるメンバーは、自分の「強み」と「弱み」を客観的に理解しようと努めています。 例えば、日々の振り返りや、上司との1on1ミーティングの場で、以下のような発言が見られるかもしれません。

  • 「自分は、新規の飛び込み営業は苦手ですが、既存顧客とじっくり関係を築いて深掘りするのは得意なようです」
  • 「雑多な事務作業を並行して行うとミスが出やすいので、タスク管理の方法を見直したいです」

自分の強みと弱みを理解しているからこそ、強みをどう活かすか、弱みをどう補うか(あるいは他者に助けを求めるか)を冷静に考えることができます。 これは、将来リーダーとしてチームを運営する際、メンバーそれぞれの個性や強みを把握し、適材適所を考え、弱みを補い合うチーム作りができる素質につながります。

チェックPOINT 7: 課題を「他人事」ではなく「自分事」として捉えるか

「営業部と開発部の連携が悪い」 「会社の経費精算システムが使いにくい」 「会議がいつも時間通りに終わらない」

組織には、日々、大小さまざまな問題や課題が発生します。 多くのメンバーは、こうした課題を「(誰かが解決すべき)他人事」として捉え、愚痴や不満を言うだけで終わってしまいがちです。

しかし、リーダーのポテンシャルを持つメンバーは、課題を「自分事」として捉え、行動を起こそうとします。

  • 「開発部との連携が悪いなら、自分が窓口になって定期的な情報交換会を企画してみよう」
  • 「経費精算が使いにくいなら、もっと効率的なフローを考えて、経理部に提案してみよう」

もちろん、彼ら一人の力で、組織全体の大きな課題がすぐに解決するわけではありません。重要なのは、その**「当事者意識」**です。 彼らは、「会社」や「組織」を、自分とは切り離された「属するもの」ではなく、「自分たちが良くしていくもの」として捉えています。

こうした主体性を持つメンバーは、将来リーダーになったとき、目の前の問題を放置せず、チームを巻き込みながら改善を推し進める原動力となってくれるはずです。

ポテンシャルを見抜くために、経営者・責任者がすべきこと

ご紹介した7つのチェックポイントは、いずれも日々の営業成績(数字)には直接表れにくい「姿勢」や「思考様式」です。

こうした内面的なポテンシャルは、日々の業務をただ眺めているだけでは見抜けません。 彼らが日々の業務の中で「何を考え(Why)」「どう感じ」「何をしようとしている(Will)」のか。

それを引き出すために、私たち経営者や営業責任者にできること。 それは、メンバー一人ひとりと向き合い、「対話」する時間を持つことです。

特に、週に一度、あるいは月に一度でも、**定期的な「1on1ミーティング」**の場を設けることを推奨します。 ただし、その場を「売上目標の進捗確認(What)」だけで終わらせてはいけません。

  • 「最近、仕事でうまくいったこと、悩んでいることは?」
  • 「チームのために、何か改善したいと思っていることはない?」
  • 「将来的(半年後、1年後)に、どんな風に成長していきたい?」

こうした対話を通じて、メンバーの考えを引き出し、彼らの内面にあるポテンシャルに光を当てること。そして、そのポテンシャルに気づいたら、少し背伸びした役割やミッションを与え、成長の機会を提供すること。

次世代のリーダー育成は、まず、私たち経営者・責任者が、メンバー一人ひとりの「隠れた可能性」に真剣に向き合い、見出そうとすることから始まります。

本日ご紹介した7つの視点が、皆様の組織の未来を担うリーダーの原石を発見する一助となれば幸いです。

営業組織のあり方や、メンバーの育成方法について、「何から手をつけるべきか分からない」「自社の課題を客観的に整理したい」とお悩みの経営者様・営業責任者様もいらっしゃるかもしれません。

私たちは、多くの企業の営業組織の課題に向き合ってきた専門家として、皆様の状況を整理し、次の一歩をどこに踏み出すべきか、一緒に考えるお手伝いをしています。ご興味がございましたら、ぜひお気軽にお声がけください。