「最近、メンバーの覇気がない」 「言われたことはやるが、それ以上の提案が出てこない」 「もっと主体的に動いてほしいが、どう伝えればいいかわからない」
多くの経営者や営業マネージャーの方から、こうした悩みを伺います。組織の数字を作る責任者として、メンバーの士気を高めたいと願うのは当然のことです。しかし、もしあなたが日々「メンバーのモチベーションを上げること」に多くのエネルギーを割いているとしたら、少し立ち止まって考えてみる必要があります。
なぜなら、モチベーションとは「他人が管理できるもの」ではないからです。
今回は、精神論に頼らず、メンバーが自然と前向きに仕事に取り組み、成果を出せるようになるための「環境づくり」についてお話しします。
「やる気を出せ」は、なぜ機能しないのか
営業の世界では、長らく「気合い」や「根性」が重視されてきました。もちろん、困難に立ち向かう姿勢は大切です。しかし、上司が「やる気を出せ」「目標必達だ」と檄を飛ばすだけで数字が上がるなら、苦労はありません。
外部からの刺激(称賛や叱責)によるモチベーションは、一時的なものです。カンフル剤のようなもので、効果は長続きしません。それどころか、常に誰かに励まされないと動けない、あるいは怒られないとやらないという、依存的な体質を作ってしまうリスクすらあります。
本当に強い組織とは、上司がいちいち指示を出さなくても、メンバー一人ひとりが自分で考え、判断し、行動できる「自走する組織」です。そのためには、外側からやる気を注入するのではなく、内側から自然と意欲が湧いてくるメカニズムを作る必要があります。
人が仕事に対して「楽しい」「もっとやりたい」と前向きになる瞬間とは、どのような時でしょうか。 それは、「自分が役に立っている」という貢献実感や、「昨日よりできるようになった」という成長実感、そして「自分で決めて実行した」という自己決定感を感じられた時です。
マネージャーの仕事は、部下の感情をコントロールすることではありません。部下がこうした実感を得られるような「舞台(環境)」を整えることこそが、本来の役割なのです。
「見えない」ことが不安と停滞を生む
メンバーが自発的に動かない原因の多くは、実は「やる気がない」からではありません。「何を、どうすればいいか分からない」あるいは「自分の行動が正しいのか自信がない」という状態にあることが多いのです。
例えば、成果が出ているトップセールスの行動は、しばしばブラックボックス化しています。「センスがいい」「勘が鋭い」といった曖昧な言葉で片付けられ、他のメンバーには真似ができません。これでは、経験の浅いメンバーや伸び悩んでいる中堅社員は、暗闇の中で手探りをしているようなものです。これでは不安になり、足が止まってしまうのも無理はありません。
ここで必要になるのが、徹底的な「見える化」です。
誰が、いつ、どのようなプロセスで商談を進めているのか。成果を出している人は、どのタイミングで、どのような資料を見せ、どのような質問をしているのか。これらを具体的な行動レベルまで分解し、誰でもわかる言葉や図にして共有する必要があります。
「売れるための正解ルート」が地図のように目の前に広がっていれば、メンバーは迷うことなくアクセルを踏むことができます。「こうすればうまくいく」という道筋が見えることで、初めて人は安心して全力疾走できるのです。
1on1は「進捗確認」の場ではない
プロセスが見えるようになれば、次はそれを実行するためのサポートが必要です。ここで非常に有効な手段となるのが、定期的な「1on1ミーティング」です。
しかし、多くの企業で導入されている1on1の実態を聞くと、「今月の数字はどうなっている?」「A社の案件はいつ決まる?」といった、単なる進捗確認や「詰め」の場になってしまっているケースが散見されます。これでは、部下にとって1on1は苦痛な時間でしかなく、上司の顔色を伺う時間になってしまいます。
自走する組織を作るための1on1の目的は、大きく分けて二つあります。
一つは、「行動の振り返りと修正」です。 見える化されたプロセスに基づき、「どの工程でつまずいているのか」「なぜうまくいかなかったのか」を事実ベースで話し合います。上司は答えを教えるのではなく、「どうすれば次はうまくいくと思う?」と問いかけ、部下自身に思考させます。自分で考えた改善策だからこそ、部下は責任を持って実行しようとします。
もう一つは、「個人の目標と会社の目標の接続」です。 日々の業務が忙殺されると、メンバーは「何のためにこの仕事をしているのか」を見失いがちです。1on1を通じて、本人が将来どうなりたいのか、どのようなキャリアを築きたいのかという個人のビジョンと、会社のミッションや目標がどう重なるのかをすり合わせます。 「この仕事での努力が、自分の理想の将来につながっている」と実感できた時、仕事は「やらされるもの」から「自分のためにやるもの」へと変わります。この意識の転換こそが、強力なエンジンの役割を果たします。
マネージャーの役割は「障害物」を取り除くこと
「見える化」と「1on1」を通じて、メンバーが迷わず走れる環境を整える。これができれば、マネージャーが毎日大声で鼓舞する必要はなくなります。
しかし、現場にはまだ多くの「障害物」が存在しているかもしれません。 例えば、入力項目が多すぎて時間を奪う日報システム、形骸化した定例会議、共有されていない顧客情報などです。これらは現場の疲弊を招き、本来向けるべき顧客への意識を削いでしまいます。
マネージャーは、メンバーの働きぶりを観察し、彼らのパフォーマンスを阻害している要因を見つけ出し、取り除くことに注力すべきです。 「もっと売りに行け」と言う前に、「売るための時間は確保できているか?」「無駄な作業はないか?」と自問し、組織としての仕組みを整えるのです。
個人の能力に依存するのではなく、仕組みで勝てる体制を作ること。それが結果として、特定のスタープレイヤーだけでなく、チーム全体の底上げにつながります。誰が担当しても一定以上の品質と成果が出せる状態を作ることが、組織としての安定感を生み出します。
「楽しむ」ことができる組織は強い
最後に、根本的な話をさせてください。 営業社員のパフォーマンスを最大化するために最も大切な要素。それは「仕事を楽しむ」ことです。
ここで言う「楽しむ」とは、単に楽をするということではありません。困難な課題であっても、自分の成長を感じながら、チームで協力し、顧客に価値を提供できた時に得られる充実感のことです。
「やらなければならない」という義務感で動く組織と、「これを達成したい」という前向きな欲求で動く組織では、長期的な成果に雲泥の差が生まれます。
メンバー一人ひとりの個性を見極め、強みを活かせる配置を行い、成長を実感できる仕組みを作る。そうすることで、社員は仕事を通じて自己表現ができ、結果として業績も向上していきます。
「モチベーション管理」という言葉に疲れてしまったなら、一度視点を変えてみてください。 人を変えようとするのではなく、人が活きる「環境」と「仕組み」を変えるのです。
まずは、あなたの組織の現状を冷静な目で「見る」ことから始めてみてはいかがでしょうか。 どこにボトルネックがあるのか、何がメンバーの足を止めているのか。それを明らかにし、一つひとつ障害を取り除いていくプロセスこそが、強い営業組織を作るための着実な道筋となります。
弊社では、貴社の営業プロセスを徹底的に「見える化」し、個人のやる気に依存しない「勝てる仕組み」の構築をご支援しています。 また、仕組みを運用し、メンバーの主体性を引き出すためのマネジメント研修や1on1の導入支援も行っています。
「今のメンバーのまま、もっと成果を出したい」 「属人的な営業から脱却し、組織として強くなりたい」
そのようにお考えであれば、ぜひ一度、私たちの知見を活用してください。貴社の課題に合わせた最適なプランをご提案いたします。
