「若手が育たない」は思い込み?世代間ギャップを組織の推進力に変えるマネジメント

「最近の若手は何を考えているのかわからない」 「せっかく採用しても、少し厳しく指導するとすぐに辞めてしまう」 「言われたことはやるが、それ以上の工夫や提案が出てこない」

多くの経営者や営業責任者の方から、こうした嘆きの声を聞く機会が増えました。 かつて営業組織を支えてきた「気合」や「根性」、あるいは「先輩の背中を見て盗む」といった不文律が、今の時代には通用しづらくなっています。 一方で、デジタルネイティブである若手社員は、効率性や合理性を強く求める傾向があり、ベテラン社員が培ってきた「勘」や「経験」とうまく噛み合わない場面も多々見受けられます。

この「世代間ギャップ」を、単なる「コミュニケーション不足」や「若手の忍耐力不足」として片付けてしまってはいないでしょうか。 実は、このギャップの裏側には、営業組織が次のステージへと進化するために必要なヒントが隠されています。 世代間の断絶を嘆くのではなく、その違いを正しく理解し、組織の武器として再構築する。 今回は、そのための具体的なアプローチについてお伝えします。

なぜ、言葉が通じないのか?「OSの違い」を理解する

まず直視すべきは、ベテラン層と若手層では、仕事に対する「OS(基本ソフト)」が根本的に異なるという事実です。

多くのベテラン社員にとって、仕事とは「時間をかけて習熟するもの」であり、プロセスの中にこそ価値があるという感覚があります。「足で稼ぐ」「顧客の懐に飛び込む」といった行動は、経験則としてその有効性を体感しているからこそ出る指示です。

対して、今の20代を中心とする若手社員にとって、仕事とは「効率的に成果を出すもの」であり、納得感を重視します。彼らは幼い頃からインターネットで正解を検索することに慣れており、「なぜそれをやる必要があるのか」「それが最短ルートなのか」という論理的な説明を求めます。

ここに不幸なすれ違いが生まれます。 上司が「とにかく100件電話しろ、やればわかる」と言っても、部下は「非効率だ、やる意味がわからない」と反発します。上司からすれば「やる気がない」と映り、部下からすれば「この会社には無駄が多い、将来性がない」と映るのです。

しかし、冷静に見れば、これはどちらが正しいという話ではありません。 ベテランの持つ「泥臭い関係構築力」や「勝負勘」は、AIが台頭する時代でも代替不可能な価値です。 一方、若手の持つ「データを駆使する力」や「合理的なプロセスへのこだわり」は、組織の生産性を高めるために不可欠な要素です。

問題は、この両者を繋ぐ「共通言語」が組織に存在していないことにあります。

「背中」ではなく「地図」を見せる──プロセスの可視化

異なるOSを持つ両者が同じ方向を向くために必要なこと。それは、営業活動を客観的な事実に基づいて語り合えるようにすること、すなわち「プロセスの可視化」です。

「俺の若い頃は」という経験談は、若手には再現性のない昔話にしか聞こえません。 しかし、「過去のデータを見ると、このプロセスを経た商談の成約率は◯%高い」という事実であれば、誰にとっても納得できる根拠となります。

営業という仕事を、個人の資質やセンスに依存した「ブラックボックス」のままにしておくと、世代間ギャップは埋まりません。 いつ、誰に、どのようなアプローチを行い、どのような反応があったのか。 ボトルネックはどこにあるのか。 これらを数値や事実として洗い出し、チーム全員が見える状態にすることがスタートラインです。

プロセスが可視化されれば、指導の方法も変わります。 「もっと頑張れ」という精神論ではなく、「初回訪問からの次回アポ率が低いから、資料のこの部分を変えてみよう」という具体的な戦術論が可能になります。 論理的な若手社員にとって、明確な根拠と改善策が示される環境は非常に居心地が良く、納得して行動に移せるようになります。

これは、営業の「地図」を渡すようなものです。 目的地(目標)だけを示して「行け」と命じるのではなく、現在地を確認し、どのルートを通れば効率的にたどり着けるかを示す。 この「地図」さえあれば、経験の浅い若手であっても迷わずに走り出すことができます。

「勘」を「標準化」する──属人化からの脱却

プロセスが見えてきたら、次に行うべきは「勝ちパターンの標準化」です。 組織の中にいるトップセールスやベテラン社員は、無意識のうちに行っている「売れるための行動」があります。 彼らの頭の中にある暗黙のノウハウを、誰でも実行可能な形式に落とし込む作業です。

例えば、 「お客様が頷いたタイミングで事例を出す」 「断り文句に対して、こう切り返す」 といった微細なテクニックを、言語化し、チーム全体の資産として共有します。

これを怠ると、いつまでたっても「あの人がいないと売れない」という属人的な組織から抜け出せません。 ベテランが持つ「感覚」を、若手が理解できる「論理」に翻訳する。 そうすることで、若手はベテランの知恵を効率よく吸収でき、ベテランは自分のノウハウが組織に貢献しているという実感を得られます。

また、標準化された仕組みがあれば、人材の入れ替わりがあっても組織のパフォーマンスは落ちません。 「誰がやっても一定の成果が出る」状態を作ることこそが、組織としての安定性を生み出し、経営の予測可能性を高めます。

納得感と成長を生み出す「1on1」の活用

仕組みやデータだけでは、人は動きません。 特にこれからの世代は、「仕事を通じた自己成長」や「貢献実感」を強く求めています。 ここで重要になるのが、上司と部下が対話する「1on1」の時間です。

多くの企業で導入されている1on1ですが、単なる「業務進捗の確認」で終わっているケースが散見されます。 「数字はどうなっている?」「来月は達成できるのか?」 これでは、ただの詰め会議です。 本来の1on1とは、部下のキャリア観や価値観に寄り添い、会社の目標と個人の目標を接続するための時間であるべきです。

「この仕事を通じて、君はどうなりたいのか?」 「今の課題を乗り越えることが、将来のキャリアにどう繋がるのか?」

このように、日々の業務に「意味付け」を行うことが、マネージャーの重要な役割です。 仕組みで解決できる部分は徹底的に効率化し、浮いた時間で、人間にしかできない「動機付け」や「心のケア」に注力する。 この両輪が回って初めて、若手社員は「この会社で頑張る理由」を見つけ、主体的に動き始めます。

また、1on1は上司が部下から学ぶ場でもあります。 デジタルツールの新しい活用法や、顧客の新しいトレンドなど、若手だからこそ気づける視点を吸い上げる。 互いに教え合い、リスペクトし合う関係性が構築できれば、世代間ギャップは「多様な視点を持つ最強のチーム」へと昇華されます。

組織全体で「振り返る」文化を作る

最後に重要なのが、PDCAを回すための「振り返り」の質です。 結果が出なかった時に、「気合が足りなかった」で済ませてはいけません。 可視化されたデータを元に、「なぜ目標に届かなかったのか」を冷静に分析し、次の一手を考える。 このサイクルを組織全体で回すことが重要です。

失敗を個人の責任にするのではなく、プロセスの不備として捉え、仕組みをアップデートしていく。 そうすれば、失敗は「怒られること」ではなく「改善の種」になります。 心理的安全性が担保された環境であれば、若手からも積極的な改善提案が出てくるようになるでしょう。

変化に強い組織を作るために

世代間ギャップに悩むということは、裏を返せば、組織が過渡期にあるということです。 これまでのやり方が通用しなくなった今こそ、属人的な営業スタイルから脱却し、データと仕組みに基づいた「勝てる組織」へと変革する好機です。

  • 感覚ではなく「事実」で語り合うこと
  • 個人の技を「組織の知恵」として標準化すること
  • 対話を通じて、メンバー一人ひとりの「やりがい」を引き出すこと

これらを実現できれば、年齢や経験の差は障害ではなくなり、互いを補完し合う強力な武器となります。

とはいえ、長年染み付いた組織の文化を変え、客観的なデータを収集・分析し、効果的な育成の仕組みを一から構築するのは、決して容易なことではありません。 「わかってはいるが、日々の業務に忙殺されて手が回らない」 「どこから手をつければいいのか、具体的な手順が見えない」 というのが、多くの経営者様の本音ではないでしょうか。

営業プロセスの可視化から、勝ちパターンの抽出、そして社員の個性を活かした自走する組織づくりまで。 もし、貴社の営業組織を「人が育ち、勝手に売れる仕組み」へと進化させたいとお考えであれば、一度、外部の専門的な視点を取り入れてみるのも一つの選択肢です。

組織の壁を取り払い、社員全員がベストパフォーマンスを発揮できる環境を作るために。 まずは現状の課題を整理し、貴社に合った「勝ち筋」を見つけることから始めてみませんか。