「言われたことしかやらない」 「少し厳しく指導すると、すぐに辞めてしまう」 「ガツガツしたハングリー精神が見られない」
多くの経営者や営業責任者の方から、このような若手社員、いわゆる「Z世代」の育成に関する悩みを耳にします。これまでの営業組織では当たり前だった「背中を見て覚える」「とにかく行動量でカバーする」「数字の達成が全て」という価値観が通用せず、マネジメントのあり方に戸惑いを感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、彼らは決して能力が低いわけでも、やる気がないわけでもありません。働くことに対する価値観や、モチベーションの源泉が、これまでの世代とは少し異なっているだけなのです。
もし、貴社の営業組織が彼らのポテンシャルを活かしきれていないとしたら、それは「個人の問題」ではなく、「組織の仕組み」や「関わり方」にズレが生じている可能性があります。
本稿では、Z世代を中心とした若手営業社員が、主体的に仕事に取り組み、成果を上げるようになるための「育成」と「組織づくり」のポイントについてお伝えします。
1. 「報酬」よりも「意味」を求める世代
かつての営業現場では、「目標達成=インセンティブ=正義」という図式が強く機能していました。高い給与を得ること、役職に就くこと、あるいは社内での競争に勝つことが、強力なドライブ要因となっていました。
しかし、物質的に豊かな時代に育ったZ世代にとって、金銭的な報酬や地位は、必ずしも最優先事項ではありません。彼らがそれ以上に重視するのは、「この仕事にはどのような意味があるのか」「自分は何のためにこれをやっているのか」という「納得感」です。
例えば、単に「今月はテレアポを100件やれ」と指示されても、彼らの心は動きません。それどころか、「無駄なことをさせられている」という徒労感を感じ、モチベーションを下げてしまいます。
彼らを動かすために必要なのは、その業務の先にある「貢献の実感」です。 「この商品を届けることで、顧客のどんな課題が解決されるのか」 「このアクションが、チーム全体の目標にどう繋がっているのか」
このように、業務の目的と社会的な繋がりを明確に言語化し、伝えることが重要です。自分の仕事が誰かの役に立っている、社会に対して価値を提供しているという実感(貢献実感)こそが、彼らが仕事を楽しむための土台となります。
営業とは単にモノを売る行為ではなく、顧客の課題を解決する活動である。この本質を、日々のコミュニケーションの中でどれだけ伝えられているかが、若手の定着と成長を左右します。
2. 将来への不安を「成長」への期待に変える
Z世代のもう一つの特徴は、自身のキャリアに対する強い不安と、それゆえの「成長意欲」の高さです。「この会社にいて、自分は成長できるのか」「市場価値のあるスキルが身につくのか」という視点で、常に会社や上司をシビアに見ています。
もし、組織の中に「特定のトップセールスだけが売れている」「ノウハウが属人化していて、どうすれば売れるのかわからない」という状況があれば、若手は「ここでは再現性のあるスキルが身につかない」と判断し、早期離職に繋がります。
ここで大切なのは、営業プロセスを「見える化」し、彼らが安心して取り組める環境(仕組み)を用意することです。
誰が、いつ、どのようなアクションをとれば成果が出るのか。成功している先輩の動きは、どのようなロジックに基づいているのか。これらを感覚や根性論ではなく、データや事実に基づいて「見える化」することで、若手社員は「何を努力すればいいか」が明確になります。
「気合でなんとかしろ」と突き放すのではなく、「このプロセスを改善すれば成果が出る」という道筋を示すこと。これにより、日々の業務が「やらされ仕事」ではなく、「自分のスキルを高めるためのトレーニング」へと意味づけが変わります。自己の成長を実感できる環境があれば、彼らは驚くほどの吸収力を発揮し始めます。
3. 「管理」するための面談から、「育成」するための1on1へ
若手の意欲を引き出し、成長を促すために極めて有効なのが、上司と部下が対話する「1on1ミーティング」です。しかし、多くの企業で導入されているものの、単なる「進捗確認の場」になってしまっているケースが散見されます。
「目標まであといくら足りないんだ?」 「どうやって埋めるつもりなんだ?」
このような「詰め」の場になってしまっては、若手は萎縮し、防衛的になるだけです。これでは育成にはなりません。Z世代に向けた1on1で重要なのは、「数字の管理」ではなく、「プロセスの振り返り」と「感情の共有」です。
具体的には、以下のようなアプローチが有効です。
① 結果ではなく、プロセスと変化に注目する 結果が出なかったとしても、そのプロセスの中で「以前より良くなった点」や「工夫した点」を見つけ、承認します。「契約は取れなかったけれど、顧客の課題をここまで深掘りできたのは大きな進歩だね」といったフィードバックが、次への活力になります。自己表現を受け入れてもらえる安心感が、チャレンジ精神を育みます。
② 「なぜ?」を一緒に考える 成功した場合も失敗した場合も、データや事実に基づいて「なぜそうなったのか」を共に振り返ります。上司が答えを教えるのではなく、本人に考えさせることで、思考力が養われます。
③ 個人のWill(やりたいこと)に寄り添う 会社の目標(Must)と、本人のやりたいことや強み(Will)が重なる部分を一緒に探します。「君の強みである分析力を活かすなら、こういう提案資料を作ってみるといいかもしれない」といったように、個性を活かすアドバイスが、仕事への主体性を生み出します。
このように、1on1を「社員一人ひとりが仕事を楽しむための作戦会議」と位置付けることで、上司と部下の信頼関係は深まり、組織全体のパフォーマンス向上へと繋がっていきます。
4. 「見て盗め」からの脱却。組織で勝つ仕組みを作る
かつては、優秀な営業マンの背中を見て、技を盗むのが美徳とされてきました。しかし、スピードが求められる現代において、また効率を重視するZ世代に対して、そのような悠長な育成方法はリスクが高すぎます。
育成に時間がかかりすぎれば、その間に若手は辞めてしまいますし、特定の「スーパー営業マン」に依存した組織は、その人が抜けた瞬間に崩壊する脆さを抱えています。
必要なのは、個人のセンスやキャラクターに依存しない、「組織として勝てる仕組み」の構築です。
- トップセールスの商談プロセスを分解し、標準化する。
- 失注や成功の要因をデータで分析し、チーム全体で知見を共有する。
- 精神論ではなく、事実に基づいた改善サイクル(PDCA)を回す。
こうした「仕組み」があることで、経験の浅い若手でも一定の成果を出しやすくなります。成果が出れば、仕事が楽しくなります。仕事が楽しければ、さらに工夫しようという意欲が湧きます。このポジティブな循環を生み出すことこそが、経営者やマネージャーの役割と言えるでしょう。
5. 育成とは、個性を最大化すること
Z世代の台頭は、これまでの画一的な営業スタイルを見直す良い機会でもあります。彼らは多様な価値観を持ち、それぞれに異なる強みや個性を持っています。
ある社員は、論理的な提案書を作るのが得意かもしれません。ある社員は、顧客の懐に飛び込むコミュニケーションが得意かもしれません。 これまでの「営業とはこうあるべき」という型に無理やりはめ込むのではなく、それぞれの個性をデータとして把握し、適材適所で輝かせること。それが、結果として組織全体の営業力を最大化することに繋がります。
「厳しく指導して型にはめる」のではなく、「個々の持ち味を理解し、環境を整える」。 これからの時代のマネジメントは、農業のように土壌を整え、それぞれの種が持つ可能性を伸ばすスタイルへと変化していく必要があります。
最後に
「若手が育たない」と嘆く前に、一度自社の環境を見直してみてください。
- 彼らが「貢献実感」を持てるような目標設定ができているか?
- 「成長実感」を得られるような、再現性のある営業の仕組みはあるか?
- 個人の悩みや特性に寄り添う、質の高い「振り返り」の時間は取れているか?
これらを一つひとつ丁寧に整えていくことは、決して遠回りではありません。社員一人ひとりが仕事の意味を理解し、自分の成長を感じながら、イキイキと働く組織。それこそが、どんな市場環境の変化にも耐えうる、強くしなやかな企業の姿です。
もし、現状の営業組織において、人材育成や仕組みづくりに課題を感じていらっしゃるのであれば、まずは現状を客観的なデータとして「見る」ことから始めてみてはいかがでしょうか。曖昧だった課題が明確になり、次の一手が見えてくるはずです。
私たちは、貴社の営業組織が持つポテンシャルを最大限に引き出し、社員の皆様がベストパフォーマンスを発揮できる環境づくりを全力でサポートいたします。
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