売上結果では「伸びしろ」は見えない。感覚的な評価から脱却し事実ベースで才能を見つける具体的アプローチ

「あいつはガッツがあるから、きっと伸びる」 「彼は真面目だけれど、営業向きの性格じゃないかもしれない」

経営者や営業マネージャーの皆様が集まる会議で、メンバーの評価についてこのような会話が交わされることはないでしょうか。長年の経験で培われた「勘」は、時に鋭く本質を突くことがあります。しかし、組織が大きくなり、市場の変化が激しくなる中で、この「感覚」だけに頼った評価や育成プランには、大きなリスクが潜んでいます。

本日は、曖昧になりがちな営業メンバーの評価やポテンシャルの見極めについて、どのように客観性を持たせ、組織としての「育てる力」に変えていくかをお話しします。

「感覚」が招く、ふたつの不幸

上司の主観や感覚でメンバーのポテンシャルを判断することには、大きく分けて二つの弊害があります。

一つ目は、「埋もれる才能」の見落としです。 例えば、社内での発言が少なく、派手なアピールが苦手なメンバーがいたとします。上司から見れば「覇気がない」「積極性に欠ける」と映るかもしれません。しかし、実際の営業活動を細かく見てみると、顧客の話を丁寧に聞き、的確な資料を用意することで、商談からの成約率はチームで一番高いかもしれません。 もし、上司が「営業は元気であるべきだ」というバイアス(思い込み)だけで評価をしてしまうと、このメンバーの「ヒアリング力」や「緻密さ」という才能は評価されず、適切なポジションも与えられないまま、やがて離職してしまう可能性があります。

二つ目は、**「再現性のなさ」**です。 「なんとなく良さそう」という基準で採用や配置を行っていると、なぜその人が活躍できたのか、あるいは活躍できなかったのかの理由が言語化されません。 「あいつは特別だったから」 「やっぱりセンスの問題だ」 このような結論で片付けられてしまい、組織として「人を育てるノウハウ」が蓄積されないのです。これでは、いつまでたっても特定の個人の能力に依存した経営から抜け出すことができません。

「ポテンシャル」を構成する要素を分解する

では、どうすれば客観的にメンバーのポテンシャルを見抜くことができるのでしょうか。 大切なのは、漠然とした「営業力」という言葉を使わず、要素を細かく分解して事実を見ることです。私たちは、主に次の3つの視点でメンバーを見ることをお勧めしています。

1. 行動の「量」と「質」をデータで見る

まず見るべきは、結果(売上金額)の手前にあるプロセスです。 「頑張っている」という言葉は非常に曖昧です。 ・ターゲットとなる顧客に、どれくらいの数をアプローチしたのか ・そのうち、どれくらいが商談に進んだのか ・商談から提案、契約に至る確率は何パーセントか

これらを数字で並べるだけで、そのメンバーの特性が浮き彫りになります。 アプローチ数は多いのにアポ率が低いなら、「最初の接点作り」に課題があるかもしれません。逆に、アプローチ数は少ないが契約率が高いなら、「クロージング力」や「信頼構築力」に長けている可能性があります。 数字は嘘をつきません。まずは感情を抜きにして、事実としての数字を並べてみることがスタートです。

2. 「個性」を得意・不得意で分類する

次に、その人の性格や特性です。これも「明るい・暗い」といった単純なものではなく、ビジネスにおける適性として見ます。 ・新しい関係をゼロから築くのが得意か(狩猟型) ・既存の関係を深め、長く付き合うのが得意か(農耕型) ・論理的に説明するのが得意か、感情に訴えるのが得意か

これらを客観的に把握することで、「誰に、どの役割を任せるか」という適材適所の判断が可能になります。すべての能力が高いスーパーマンを探す必要はありません。その人の「尖った部分」がどこにあるのかを見つけることが、マネジメントの役割です。

3. 「意思」の方向性を確認する

能力や適性があっても、本人がそれをやりたいと思っていなければパフォーマンスは発揮されません。 「将来どうなりたいのか」 「仕事を通じて何を得たいのか」 この「Will(意思)」の部分が、会社の方向性と重なっている部分を見つけることが、モチベーションの源泉となります。

データの裏側にある「なぜ」を1on1で探る

客観的なデータや特性の分析ができたら、そこで終わりではありません。 ここからが、マネージャーの腕の見せ所です。データは「何が起きているか(What)」は教えてくれますが、「なぜそうなっているか(Why)」までは教えてくれません。

その「なぜ」を解き明かすために行うのが、部下との対話、いわゆる1on1ミーティングです。

ここで注意していただきたいのは、1on1は「業務進捗の確認の場」ではないということです。「目標まであといくらだ?」「どうなってるんだ?」と詰める場にしてしまっては、部下は萎縮し、本音を隠します。

そうではなく、先ほど洗い出した客観的な事実(データ)を机の上に置き、二人で横に並んでそれを眺めるイメージで会話をしてください。

「データを見ると、提案からの契約率が他のメンバーより少し低いようだね。自分ではどのあたりに難しさがあると感じている?」 「新規開拓よりも、既存のお客様からの追加注文をもらう時の方が生き生きしているように見えるけれど、実際はどう?」

このように、事実をベースにして問いかけることで、メンバー自身に振り返りを促します。 上司が一方的に「お前はここがダメだ」と決めつけるのではなく、データという共通の事実を介して対話をすることで、メンバーは「責められている」ではなく「一緒に課題を解決しようとしている」と感じることができます。

この対話を通じて、 「実は、クロージングの瞬間にどうしても遠慮してしまうんです」 「商品説明は自信があるのですが、雑談が苦手で…」 といった、本人なりの課題意識や悩みが引き出せれば、そこがまさに「育成のポイント」になります。 ここが明確になれば、あとは具体的なトレーニングや仕組みでサポートするだけです。

「人」を見る目が、組織の強さを決める

客観的な「見える化」と、個に寄り添う「対話」。 この二つを組み合わせることで、今まで見過ごされていたメンバーのポテンシャルが見えてきます。

「売れない」とレッテルを貼られていた社員が、配置転換や少しのスキル改善でトップパフォーマーに化けることは、決して珍しい話ではありません。逆に言えば、適切な評価と育成がなければ、どんなに優秀な人材を採用しても、その能力を十分に発揮させることは難しいでしょう。

経営者やリーダーが、感覚だけではなく、確かな事実に基づいてメンバー一人ひとりと向き合うこと。 そして、それぞれの個性がパズルのピースのように噛み合う組織を作ること。

それができれば、特定のスタープレイヤーに依存することなく、誰が欠けても、新しいメンバーが入っても、安定して成果を上げ続ける「強い組織」が出来上がります。

まずは、お手元の「評価シート」や「日報」を見直してみてください。 そこに書かれているのは、客観的な事実でしょうか。それとも、書いている人の主観的な感想でしょうか。 もし、「事実が見えにくい」と感じられたら、評価の指標やプロセスを見直す良いタイミングかもしれません。

社員一人ひとりが、自分の強みを自覚し、仕事に夢中になれる。 そんな組織を作るためのヒントとして、本日の内容が少しでもお役に立てれば幸いです。

貴社の営業組織において、メンバーの評価基準が曖昧になっていたり、「誰がどう動いているか見えない」といったお悩みはありませんか? 私たちは、現状の営業プロセスを可視化し、客観的なデータに基づいて御社の「勝ちパターン」と「個人の強み」を見つけ出すお手伝いをしています。

もし、組織の現状を一度フラットな視点で分析してみたいと思われましたら、ぜひ一度お話を聞かせてください。まずは現状の課題感をお伺いするだけでも、解決の糸口が見つかるはずです。