その「適材適所」は感覚頼みではありませんか?個性を科学して「勝てるポジション」に配置する技術

優秀な人材を採用したはずなのに、思ったような成果が上がらない。 本人のやる気はあるようだが、空回りをしているように見える。 あるいは、特定の「エース」に依存した組織から脱却できず、組織全体のベースアップが進まない。

もし、貴社の営業組織でこのような悩みが尽きないのであれば、それは個々の能力不足や教育不足の問題ではないかもしれません。もっと根本的な、**「配置と個性のミスマッチ」**が原因である可能性が高いのです。

多くの企業で「適材適所」という言葉が使われていますが、その判断基準はどこにあるでしょうか。「彼はコミュニケーション能力が高いから営業向きだ」「粘り強いから新規開拓ができるはずだ」といった、上司の経験則や感覚に頼った配置になってはいないでしょうか。

もちろん、直感や経験は大切です。しかし、ビジネスの環境が複雑化し、顧客の購買行動も多様化している現代において、感覚のみに頼った配置はリスクを伴います。 本コラムでは、精神論や根性論ではなく、論理的かつ科学的な視点から、社員一人ひとりのパフォーマンスを最大化するための「配置の技術」についてお伝えします。

「能力」と「個性」を混同してはいけない

まず整理すべきは、「スキル(能力)」と「スタンス(個性・特性)」の違いです。

スキルとは、商品知識、プレゼンテーション技術、クロージングの手法など、後天的に学習や訓練によって習得できるものです。一方、個性や特性とは、「どのような状況でモチベーションが上がるか」「どのような思考プロセスを好むか」「ストレスを感じる対人関係は何か」といった、その人自身の根源的な性質に近いものを指します。

多くの営業組織では、スキル不足を補うためのトレーニングには熱心ですが、この「個性」と「業務内容」の適合性については、あまり深く議論されません。

例えば、一口に「営業」と言っても、そのプロセスには多様な要素が含まれます。 全く接点のない相手にアプローチし、関係をゼロから築くことに喜びを感じる「突破型」のタイプもいれば、既存の顧客とじっくり対話し、課題を深掘りして信頼関係を強固にすることに長けた「深耕型」のタイプもいます。また、直感的に相手の懐に飛び込むのが得意なタイプもいれば、論理的にデータを積み上げて説得するのが得意なタイプもいます。

もし、論理的な分析を好む慎重なタイプの人材に、「とにかく数打てば当たる」という行動量重視の新規開拓を任せたらどうなるでしょうか。あるいは、変化と刺激を好む行動派の人材に、定型的なルートセールスや緻密な事務処理を求めたらどうなるでしょうか。

彼らは「仕事ができない」のではなく、「自分の個性が活きない土俵」で戦わされているだけなのかもしれません。このミスマッチを放置したまま、いくら「もっと頑張れ」「気合いが足りない」とハッパをかけても、成果が出ないばかりか、社員は疲弊し、自信を失い、最終的には離職へと繋がってしまうのです。

「個性を科学する」とはどういうことか

では、どのようにして個性を把握し、適切な配置を行えばよいのでしょうか。ここで重要になるのが、**「事実とデータに基づく客観的な分析」**です。

普段の仕事ぶりを見ているだけでは、その人の本質的な特性までは見えません。「明るく振る舞っているが、実は一人で黙々と作業する方が好き」という営業担当者もいますし、「口数は少ないが、相手の話を聞き出す傾聴力はずば抜けている」という人もいます。

個性を科学するためのアプローチは、大きく分けて二つのステップがあります。

一つ目は、業務プロセスの分解です。 貴社の営業活動を、リード獲得から商談、契約、アフターフォローに至るまで、細かく分解してみてください。そして、それぞれの工程で「どのような行動特性」が求められるかを定義します。

二つ目は、メンバーの特性の可視化です。 これには、日々の行動データや成果のデータだけでなく、対話を通じた定性的な情報収集が必要です。ここで非常に重要になるのが、上司と部下による**「質の高い1on1(ワンオンワン)」**です。

育成と配置のための「1on1」の活用法

多くの企業で行われている1on1は、単なる「進捗確認の場」になりがちです。「今月の数字はどうなっている?」「見込み案件はあるか?」といった会話だけでは、メンバーの個性は見えてきません。

配置の最適化や育成を目的とした1on1では、以下のような問いかけが有効です。

  • 「先週の仕事の中で、一番時間が経つのを忘れて没頭できたのはどの瞬間だった?」
  • 「逆に、一番エネルギーを消耗した、気が進まない業務は何だった?」
  • 「お客様から言われて嬉しかった言葉、あるいは傷ついた言葉は?」
  • 「もし何の制約もなければ、どのような営業スタイルを試してみたい?」

こうした対話を積み重ねることで、メンバー自身も気づいていなかった「自分の勝ちパターン」や「モチベーションの源泉」が浮き彫りになってきます。

例えば、あるメンバーが「飛び込み営業は辛いが、一度話を聞いてくれたお客様への提案資料を作っている時は楽しい」と答えたとします。その資料の質が高く、論理構成もしっかりしているなら、彼は「フロントに立つ開拓部隊」ではなく、「商談の確度を高めるプランニング部隊」や「インサイドセールス」として配置した方が、組織全体としての生産性は上がるかもしれません。

このように、対話から得られた情報を蓄積し、客観的な事実として捉えること。それが「個性を科学する」ための第一歩となります。

「弱みの克服」より「強みの最大化」が組織を強くする

日本の組織は伝統的に、弱点を克服し、全員を平均点の高い「万能型」に育てようとする傾向があります。しかし、変化の激しい現代において、全てのスキルを高いレベルで兼ね備えたスーパーマンのような人材を採用・育成するのは現実的ではありません。

むしろ目指すべきは、**「凹凸のある個性が噛み合った組織」**です。

Aさんの苦手な事務処理は、それが得意なBさんがサポートする。Bさんが苦手なクロージングは、交渉が得意なCさんが同行する。このように、個々の強み(凸)を活かし、弱み(凹)を組織で補完し合う仕組みを作ることこそが、経営者やマネージャーの役割です。

適材適所が機能している状態とは、単にスキルと業務が合っているだけではありません。社員一人ひとりが**「自分らしさを発揮しながら、組織に貢献できている」という実感を持てている状態**です。

人は、自分の強みが活かされていると感じる時、仕事そのものを楽しむことができます。 「仕事を楽しむ」というと、楽をすることのように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。自らの意思で工夫し、挑戦し、成果を出すプロセスそのものに没頭することです。このポジティブな感情こそが、高いパフォーマンスを生み出す最大のエンジンとなります。

組織としての「再現性」を高めるために

個性を活かした配置を行うことは、属人化を助長することではありません。むしろ逆です。 「誰か一人の天才的な営業マン」に頼るのではなく、異なる個性を持つメンバーが、それぞれの持ち場で力を発揮し、その総和として組織目標を達成する。これこそが、特定の個人に依存しない、強固な組織構造です。

そのためには、以下のサイクルを回し続けることが大切です。

  1. 見える化:業務プロセスとメンバーの個性を客観的なデータとして把握する。
  2. 仮説と実行:個性に基づいた配置や役割分担を行い、小さな改善を試みる。
  3. 振り返り:配置の結果どうだったか、本人との1on1を通じて振り返り、事実を確認する。
  4. 仕組み化:うまくいったパターンを組織のナレッジとして共有し、標準化する。

特に「振り返り」のプロセスは重要です。一度配置を変えたら終わりではありません。やってみて違和感があれば、また微調整すれば良いのです。この柔軟性こそが、変化に強い組織を作ります。

営業組織の課題は、「売上が上がらないこと」そのものではなく、その手前にある「人と組織のズレ」にあることがほとんどです。

「うちの社員はもっとできるはずだ」 経営者の皆様がそう感じるのであれば、それは間違いなく真実です。彼らのポテンシャルは、まだ眠っているだけかもしれません。 必要なのは、彼らの個性を解き明かすための「レンズ」と、それを活かすための「配置の設計図」です。

今一度、貴社の組織図を眺めてみてください。 そこにあるのは、単なる役職と名前の羅列でしょうか。それとも、一人ひとりの個性が躍動する、生きた組織の姿でしょうか。

もし、社員一人ひとりの特性をデータで可視化し、科学的な根拠に基づいて組織を再構築したいとお考えであれば、まずは現状を正しく「見る」ことから始めてみてはいかがでしょうか。 客観的な視点を取り入れることで、今まで見えていなかった組織の可能性が、きっと明らかになるはずです。

貴社の営業組織において、メンバーの個性が十分に活かされているか、あるいはどこにミスマッチの可能性があるか、一度客観的な視点で診断してみませんか? 私たちは、データと対話に基づいた組織の「見える化」を通じて、貴社の営業力を最大化するお手伝いをしています。現状の課題感をお聞かせいただくだけでも、解決への糸口が見つかるかもしれません。まずはお気軽にご相談ください。