来年、組織が勝手に動き出す。大晦日にリーダーが考えるべき「人と仕組み」の話

本日は大晦日です。一年間、激動のビジネス環境の中、組織を牽引されてきた経営者様、そして営業責任者の皆様、本当にお疲れ様でした。

多くの日本企業では3月が決算月であるため、今日はまだ「第三四半期の終わり」という位置づけかもしれません。最後の第四四半期に向けて、すでに気を引き締めている方も多いことでしょう。しかし、世の中全体が「年が変わる」という節目を迎えるこのタイミングは、組織の空気を入れ替え、一度立ち止まって深く思考を巡らせる絶好の機会でもあります。

今回は、単なる数字の確認ではない、来年(あるいは残り3ヶ月)の飛躍に向けた「質の高い振り返り」について考えてみたいと思います。

数字の裏側にある「プロセス」は見えていますか?

年末の営業会議でよく見られるのが、年間の売上目標に対する達成率の確認と、未達の場合の叱咤激励、あるいは達成した場合の称賛だけで終わってしまう光景です。もちろん、結果である数字は重要です。経営において数字は嘘をつきません。しかし、数字はあくまで過去の通信簿であり、未来を変えるための具体策そのものではありません。

「なぜ売れたのか」「なぜ売れなかったのか」。 この問いに対して、現場の営業担当者やマネージャーから返ってくる答えはどのようなものでしょうか。「気合いが足りなかった」「たまたま大型案件が決まった」「競合が強かった」といった、感覚的で曖昧な言葉ばかりが並んでいないでしょうか。

もしそうであれば、それは組織としての改善サイクルが回っていない危険信号です。

来年に向けて本当に必要なのは、結果に至るまでの「プロセス」を事実として直視することです。 例えば、商談数は足りていたのか、提案の質はどうだったのか、顧客の課題を正しく捉えられていたのか。これらを「なんとなく」ではなく、具体的なデータや事実としてテーブルの上に広げることが、改善のスタートラインになります。

特に注目すべきは、トップセールスのやり方だけでなく、伸び悩んでいるメンバーが「どこでつまずいているか」という事実です。アポイントは取れるけれど提案で止まっているのか、提案は通るけれどクロージングが決まらないのか。ボトルネックがどこにあるかが分からなければ、打つべき手も決まりません。

「反省会」ではなく「作戦会議」に変える

振り返りと聞くと、どうしても悪い点を探す「反省会」になりがちです。しかし、本来行うべきは、事実に基づいた未来のための「作戦会議」です。

ここで大切にしたい視点が、「仕組み」と「人」のバランスです。

営業組織において「属人化からの脱却」は永遠のテーマのように語られますが、それは個性を消してロボットのように均一化することではありません。むしろ逆です。一人ひとりが持つ本来の強みや個性を最大限に発揮してもらうためにこそ、土台となる仕組みが必要です。

振り返りを行う際は、以下の二つの視点を行き来してみてください。

1. 仕組みの視点:誰がやっても成果が出せる状態になっているか うまくいった商談の勝ちパターンは共有されていますか? 逆に、非効率な事務作業や、本来営業がやるべきではない業務に時間を奪われていませんか? これらは個人の努力ではなく、組織としてルールやツールを見直すことで解消できる問題です。

2. 人の視点:メンバーは仕事を楽しめているか ここが、多くの組織で見落とされがちなポイントです。営業という仕事は、断られることも多く、精神的な負荷がかかりやすい職種です。その中で高いパフォーマンスを出し続けるためには、メンバー自身が仕事に「手応え」を感じている必要があります。

「顧客の役に立てた(貢献実感)」 「以前よりできることが増えた(成長実感)」 「自分の強みを活かせている(自己表現)」

こうしたポジティブな感情を持てているメンバーは、自然と工夫し、行動量も増えます。逆に、ただノルマに追われ、やらされ仕事になっているメンバーは、どんなに優れたツールを与えても成果は限定的です。

1on1で「個人の思い」に耳を傾ける

全体会議での振り返りが終わったら、ぜひ年明け早々にでも、メンバー一人ひとりと向き合う時間を作ってみてください。いわゆる「1on1」の場です。

この場では、細かい案件の進捗確認は脇に置きましょう。それは普段の業務連絡で十分です。 代わりに聞いてあげてほしいのは、「今年、一番嬉しかった仕事は何か」「今、何に一番困っているか」「今後どうなりたいか」という、本人の感情やキャリアに関わる話です。

「営業の人材育成に困っている」という経営者の方から相談を受けることがありますが、その多くは、メンバーが「なぜこの目標を達成しなければならないのか」という腹落ち感を欠いたまま走らされているケースです。

1on1を通じて、会社の目標と個人の目標(成長や将来像)をリンクさせてあげること。 「君のこういう強みは、来期のこのプロジェクトでこう活きるはずだ」と伝えてあげること。 それだけで、メンバーの目の色は変わります。

マネージャーや経営者が、メンバー一人ひとりの「個性」や「コンディション」を正しく把握できているか。これは、組織の基礎体力を測るバロメーターでもあります。

小さな変化の積み重ねが、大きな成果を生む

さて、振り返りと個別の対話を終えたら、次は実行です。 ここで多くの企業が陥る罠が、「来年からは全てを一新する!」というような、あまりに壮大すぎる計画を立ててしまうことです。現場は日々の業務で手一杯ですから、急激な変化にはついていけず、結局三日坊主で終わってしまいます。

大切なのは、明日からすぐに始められる「小さな改善」を積み重ねることです。

  • まずは、商談の記録を3行だけ詳しく書いてみる。
  • 毎週月曜日に、成功事例を一つだけチームで共有する時間を設ける。
  • マネージャーは、メンバーの話を遮らずに聞く時間を5分増やす。

こうした、無理なく続けられる小さなアクション(PDCA)を高速で回していくことこそが、結果として組織の体質を強くします。

3月決算の企業様にとっては、残り3ヶ月はラストスパートの時期です。しかし、ただ闇雲に走るのではなく、ここまでの一年を冷静に振り返り、「何がうまくいき、何が課題だったのか」を整理してから走る3ヶ月は、密度が全く違うものになるはずです。

組織が「自走」し始める未来へ

理想的な営業組織とは、経営者やトップが事細かに指示を出さなくても、現場のメンバーが自ら課題を見つけ、話し合い、改善し続けられる状態です。

そのような「自走する組織」は、一朝一夕にはできません。 しかし、まずは現状を正しく見る(見える化する)こと。 そして、数字だけでなく「人」の感情や成長に目を向けること。 この二つを意識して組織運営を行うことで、必ず道は拓けてきます。

今年一年、様々な困難があったかと思いますが、それらはすべて来年の糧です。 「終わりよければすべてよし」という言葉がありますが、今日という日を、単なるカレンダーの終わりにするのではなく、来年の飛躍に向けた確かな準備の日として過ごしてみてはいかがでしょうか。

皆様の会社にとって、来る新しい年(あるいは新年度)が、過去最高のパフォーマンスを発揮できる素晴らしい一年となることを心よりお祈り申し上げます。

もし、社内だけでは「どこに課題があるのか見えにくい」「振り返りの視点が定まらない」と感じられる場合は、一度外部の視点を入れてみるのも一つの選択肢です。客観的なデータとプロの視点は、時に思いもよらない突破口を見つけ出すきっかけになります。

それでは、良いお年をお迎えください。