幕末の動乱期に彗星の如く現れ、時流に乗って短期間で池田屋事件を始め数々の戦いで名を馳せた新選組。最盛期には200人を超える組織にまで成長しました。しかし、活躍したのはわずか5、6年と短く、長期的な存続はできませんでした。
その新選組を作った、世間からも内部からも鬼の副長と恐れられた土方歳三の組織作りについて、成功要因と、長続きしなかった失敗要因から、現代のビジネスにも通じる組織作りのヒントを学ぶことが出来ます。
成功要因
- ナンバー2に徹した
土方は、ナンバー1の近藤勇を組織の中で太陽のような存在として常に立て、自身は一歩引いていました。厳しい命令は全て自分から出し、近藤への求心力を集め、組織の調和や結束力を高めました。
- 徹底的なトップダウンと成果主義
「誠」という明確なビジョンの旗を掲げ、「士道に背くまじきこと」と単純明快な隊の規則を作り徹底させました。隊士の行動を厳しく管理し、成果主義を徹底することで、新選組の組織力を高めました。
- 人材活用
武士だけでなく百姓、町人、学者など様々な出自から人を採用し、それぞれの能力を伸ばし発揮できる組織環境、仕組を整えました。
失敗要因
- 柔軟性の欠如
土方は、規則や規律を重視し、例外を許さない厳格な姿勢を取りました。それが高い組織力を作った反面、厳しすぎる規律は反発を招きました。個人の事情より組織の事情を優先させるようなトップダウン組織は、メンバーの不満を増加させ、モチベーションを下げる要因となります。
- 考え方の偏り
土方は、同門の天然理心流の身内を特に信用し、自身の考えを最重要視し、他流派の異なる意見を取り入れることをほとんどせず、その姿勢を貫きました。初期には組織の方向性を定める必要があるため、一貫した姿勢は有効かもしれませんが、組織が成長するにつれ、他流派出身者は疎外感を感じ、組織の閉塞化を招きました。結果、創業期のメンバーである、山南敬助、永倉新八、藤堂平助、原田左之助といった面々が次第に離脱していきました。
- コミュニケーション不足
土方は、隊士から恐れられ話し掛けづらい存在でした。自身の役割を演じていた面もあるかもしれませんが、過度な威厳やその態度は不必要に敵を作ってしまった一因にもなりました。上司と部下のコミュニケーション不足は、隊士の不満を高め、主要メンバー以外にも離脱に繋がりました。
現代の組織に活かせる教訓
- ナンバー2の重要性
ナンバー2は、リーダーを支え、組織をまとめる重要な役割を担います。土方のように、リーダーを立て、組織の調和を図る存在は、現代の組織でも不可欠です。
- ビジョンと規律の明確化
組織の目標と方向性を明確にするビジョンと、それを実現するための規律は、組織の成長にとって不可欠です。土方のように、シンプルな言葉でわかりやすく示すことが重要です。
- 人材活用の重要性
従業員の個性、長所や短所を把握し、それぞれの能力を発揮できる環境を整えることは、組織の競争力を高めるために重要です。土方のように、多様な人材を受け入れ、長所を伸ばし活躍できる環境を整えることは、現代の組織でも求められます。
- 状況に適応する柔軟性
規則やルールを厳しく守り、従業員に守らせることは重要ですが、状況によって柔軟な対応をすることは必要です。一人一人の状況によっても、時には例外的な対応も考慮すべきです。また、変化が大きく早い現代のビジネス環境では、様々な点で柔軟性を持つことも重要です。
- 多様性の尊重
異なる意見や考えを受け入れ、活かすことは、組織のイノベーションを促進するために重要です。土方の失敗から、組織の閉塞化を防ぎ、多様性を尊重する重要性を学ぶことがでます。
- コミュニケーションの重要性
上司と部下が互いに理解し、信頼関係を築くためには、コミュニケーションが不可欠です。土方のコミュニケーション不足は、隊士の不満を高め、離脱に繋がりました。部下にとって上司は、頼りになり何でも相談しやすい存在であることが重要です。上司が積極的にコミュニケーションを取ることで、従業員一人一人のモチベーションを高め、組織の士気を高めることができます。
- 短期的な視点と長期的な視点を持つ
短期的には絶大な効果と成功を収めた土方のやり方も、長期的に成長を続ける組織を作りだすことはできませんでした。組織作りには、短期的な視点と長期的な視点を併せ持つことが重要です。短期的に成果を上げているやり方も、どこかで次のステップに切り替え、継続的に組織を成長させていく必要があります。
まとめ 土方歳三は、現代のビジネスにも通じる組織作りのヒントを与えてくれます。彼の成功と失敗から、多くの教訓を得ることができます。これらを意識することにより、継続的に成長するより強い組織を作っていくことができるでしょう。