歴史に学ぶ② 部下に任せること、育成の重要性:築城三名人 部下に任せた藤堂高虎と部下に任せなかった加藤清正のマネジメント

戦国時代を代表する築城の名手として名高い藤堂高虎と加藤清正

彼らは「築城三名人」と称されるほど卓越した技術を持ち、それぞれ名城を築き上げました。しかし、二人の歩んだ道は全く別で、その体験からか二人のマネジメントスタイルは対照的でした。

部下を育てる藤堂高虎

近江国出身の藤堂高虎は、最初は地元の浅井長政に仕え、その後、羽柴秀長や秀吉、最後は家康に仕えるまで、7人の主君に仕え、今で言う転職を繰り返しながら立身出世を果たしました。自身も苦労を経験したからこそ、部下の気持ちを理解し、「育てる」重要性を認識していました。

・自身の経験から部下への理解

高虎は、自身でやった方が早く精度が高い仕事でも部下に任せ、経験を積ませました。たとえ時間がかかっても、失敗しても、見守り、指導することで成長を促しました。部下に権限を与え、責任を持たせ、自らの判断で行動できるよう裁量権を与え、主体性を育てました。部下を信頼し、成果を認め、モチベーションを高め、更なる成長を促しました。

結果、高虎は伊勢津藩22万石を築き上げ、江戸時代幕末まで続く藤堂家を作りました。

自ら行う加藤清正

一方、尾張国出身の加藤清正は、幼少期から親戚の秀吉に仕え、その恩顧に報いるために生涯秀吉のために自身の能力を磨き続けました。秀吉一人の役に立つために努力を怠らなかった清正ですが、あまり部下を育てるということはしませんでした。

・自身の経験から、部下は自ら鍛え成長するもの

清正は、自身が最も優秀であるという自負を持ち、重要なことは全て自身の判断で行いました。スピードと効率を重視し、自ら指揮を執ることで数々の武勲を上げ、最高の結果を求め続けました。部下に対しても、自身がそうしてきたように自ら成長することを求めました。

結果、清正は肥後熊本54万石を与えられ、三名城として有名な熊本城を築き上げましたが、死後、息子は改易されました。

現代への教訓

藤堂高虎と加藤清正のマネジメントスタイルは、現代にも多くの教訓を与えてくれます。

・部下を育てる重要性

現代の企業においても、部下を育成することは、組織全体の成長にとって不可欠です。高虎のように、部下に経験を積ませ、権限を与え、信頼することで、主体的に考え、行動できる人材を育成することができます。

・状況に応じたマネジメント

一方、清正のように、自ら率先して行動することで成果を出すスタイルも有効な場合もあります。状況に応じて、適切なマネジメントを選択することが重要です。

・一つの価値観にとらわれない

清正は生涯豊臣家の中で働き、自身で一家を築いた後も豊臣家の家臣と言う立場を貫き、その枠を出ることはしませんでした。それは素晴らしい考え方である一方、高虎のように7人主人を替え、その都度様々な価値観を見続け、自身の価値観を見出していった場合と比較すると、少し偏狭になってしまう恐れがあります。社内の価値観だけに固執せず、外部の価値観を受け入れることも重要です。

・多様な人材の活用

現代社会は、ますます多様化しています。それぞれの部下の個性や能力を理解し、それぞれの成長に合わせたマネジメントを行うことが求められます。

部下に任せること、育成することは、組織の未来を築くための投資です。

藤堂高虎と加藤清正の事例を参考に、経営陣だけでなく、マネージャーも、それぞれのチームに合ったマネジメントスタイルを構築し、未来を担う人材を育成していきましょう。

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