営業OJTの限界と解決策|教える側を育てると組織の育成力が変わる

営業OJTの限界と解決策|教える側を育てると組織の育成力が変わる

「OJTはやっています」という組織に入って現場を見ると、
実態はたいてい同じです。
先輩の商談に同席させる。終わったら「どうだった?」と一言聞く。
「勉強になりました」で終わる。
何を観察すればよかったのか、次に何を意識すればいいのか——
具体的な対話がないまま、「やった」という事実だけが残っています。
OJTは育成の方法として間違っていません。
ただ、設計がなければ機能しません。
本記事では、営業OJTが機能しない根本原因と、
教える側と学ぶ側を同時に育てる仕組みの作り方を解説します。


OJTが機能していない現場に共通する「4つのパターン」

支援先の現場でOJTがうまくいっていない組織を見ると、
共通したパターンがあります。

一つ目は、「背中を見て学べ」で終わっていて、
何を観察すればいいかわからない状態です。
先輩の商談に同席しても、観察のポイントが示されなければ
「なんとなく見ていた」で終わります。
気づきを言語化する機会もないため、
学んだことが次の行動に結びつきません。

二つ目は、教える人によって内容が違い、
若手が混乱している状態です。
Aさんには「まずアポ数を増やせ」と言われ、
Bさんには「質を上げろ」と言われる。
何が正しいかわからないまま、若手は板挟みになっています。

三つ目は、OJTを担当する先輩自身が忙しすぎて、
関わる時間がない状態です。
「教えたいが、自分の案件で手一杯」という状況が続くと、
OJTは形だけのものになっていきます。

四つ目は、OJTはしているが振り返りや対話がなく、
一方通行になっている状態です。
先輩が話す、若手が聞く。これだけでは、
若手が何を理解して何を理解していないかが把握できません。
「教えた」と「伝わった」は、まったく別のことです。

OJTの問題は「教わる側」ではなく「教える側」にある

こうした状況を見るたびに感じることがあります。
OJTがうまくいかない原因を若手に求めがちですが、
実際には教える側の問題であることがほとんどです。

先輩やマネージャーは、営業のスキルは持っています。
でも「教えるスキル」は別です。
どう説明すれば伝わるか、何を観察させれば気づきが生まれるか、
振り返りでどんな問いを投げれば考えが深まるか——
こうした「教え方」を、誰も教わっていません。


「教える側にも1on1をして、教え方を教えた」

現場でOJT依存から脱却するために最初に取り組んだのは、
若手への直接指導と、教える側への支援を同時に進めることでした。

若手メンバーには直接1on1に入り、
現場で何が起きているか、何に詰まっているかを丁寧に把握しながら育成する。
と同時に、OJTを担当する先輩やマネージャーにも1on1を行い、
「どう教えればいいか」を一緒に考えていきました。

「あの商談の後、若手に何を聞きましたか?」
「次回同席するとき、どこを観察させようと思っていますか?」
「振り返りで、どんな問いを投げましたか?」

こうした問いを繰り返すことで、
教える側が自分の関わり方を客観的に見られるようになっていきます。
教え方を教えることが、組織全体の育成力を上げる近道です。

OJTに「振り返りの設計」を加える

OJTを機能させるために、最もシンプルで効果的な改善があります。
商談同席の後に、必ず15分の振り返りセッションを設けることです。

振り返りで使う問いは3つだけです。
「今日の商談で、一番印象に残ったことは何ですか?」
「もし自分が担当していたら、どこを変えてみますか?」
「来週の商談で、一つだけ試してみることを決めるとしたら何ですか?」

この問いに答えることで、若手は「見ただけ」から「考えた」に変わります。
先輩も「教えた」から「対話した」に変わります。
この小さな設計の違いが、OJTの質を大きく変えます。


OJTの仕組みを変えたとき、現場で起きた変化

OJTに振り返りと1on1を組み合わせた仕組みを導入したとき、
現場では複数の変化が同時に起きました。

教える側の先輩も成長しました。
「教えることで、自分の営業を言語化する機会になった」
という声が出てきます。
人に教えることが、自分自身の理解を深めることにつながるのです。

育成の質がOJT担当者によってばらつかなくなりました。
振り返りの型と問いが共通化されることで、
誰が担当しても一定の水準の育成ができるようになります。

そして組織全体に育成文化が生まれました。
「教えることが自分の仕事の一部だ」という意識が広がり、
先輩が率先して若手に関わるようになっていきます。

実際に支援したSaaS企業では、
こうした育成の仕組みを整えた結果、
メンバー一人当たりの平均月間契約件数が1.2件から4.8件へと拡大。
チームの月間売上は基準値の3倍に達しました。


よくある質問(FAQ)

Q. OJT担当の先輩が「教えるのが苦手」と言っています。どうすればいいですか?

A. 「教えるのが苦手」という感覚は、
「何をどう教えればいいかわからない」という状態から来ていることがほとんどです。
振り返りの問いや観察ポイントをあらかじめ用意し、
「これを使えばいい」という型を渡すことで、
苦手意識は大きく下がります。
教え方を教えることが、最初の一歩です。

Q. OJTと1on1はどう使い分ければいいですか?

A. OJTは「現場での実践と観察」、
1on1は「個人の内面と課題を深く掘り下げる場」です。
OJTで起きたことを1on1で振り返る、という組み合わせが最も効果的です。
「今週のOJTでどんな気づきがありましたか?」という問いから
1on1を始めることで、両者がつながります。

Q. 先輩社員がOJTに消極的で、若手に関わろうとしません。どう変えればいいですか?

A. 消極的な理由を先に把握することが大切です。
「忙しい」「何を教えればいいかわからない」「責任を負いたくない」——
理由によって対応が変わります。
「教えることが自分の成長にもなる」という体験を
小さく作ることが、意識を変える入口になります。
振り返りセッション15分だけ、という小さな関わりから始めてみてください。


まとめ

OJTが機能しない原因は、教わる側ではなく教える側と仕組みにあります。
「背中を見て学べ」で終わるOJTに、
振り返りの設計と1on1を組み合わせることで、
教える側も学ぶ側も同時に成長できる育成の仕組みができます。
組織の育成力は、教え方を教えることから上がっていきます。


営業組織の課題でお悩みの方は、株式会社CsMの無料相談をご活用ください。

上部へスクロール

このコラムが気になった方へ