営業プロセスの可視化|フェーズ定義・判断基準・管理シートの作り方

営業プロセスの可視化|フェーズ定義・判断基準・管理シートの作り方

営業担当者ごとに仕事の進め方が異なり、案件がどこで止まっているか分からない。トップ営業のやり方は共有されず、新人は先輩の背中を見て覚えるしかない。このような状態では、売上が伸びない原因も、育成で支援すべきことも見えにくくなります。

営業プロセスの可視化は、営業を画一的にするためのものではありません。顧客の検討がどこまで進み、営業側が次に何を確認・実行すべきかをチームで共通化し、成果が出る行動を再現できる状態にするための仕組みです。

この記事では、少人数のBtoB営業組織が、SFAやCRMを導入する前でも始められる営業プロセスの可視化方法を解説します。フェーズの作り方、次に進める条件、案件を戻す基準、見るべきKPI、週次レビューの進め方を、管理シートの形で紹介します。

この記事で分かること
営業プロセスを単なる「営業フロー図」で終わらせず、案件の判断・育成・KPI改善に使える運用へ変える方法を解説します。

営業プロセスの可視化とは

営業プロセスの可視化とは、顧客との最初の接点から受注までをいくつかの段階に分け、各段階で確認すること、次に進める条件、数字をチームで共有することです。

大切なのは、営業担当者が何をしたかだけでなく、顧客側の意思決定がどこまで進んでいるかでフェーズを定義することです。「電話をした」「資料を送った」は営業側の行動です。一方で、「顧客の課題と優先度を確認できた」「決裁関係者と導入時期を確認できた」は、顧客の検討を前に進めるための事実です。

比較項目 営業フロー 営業プロセス
主に見るもの 担当者が行う業務の順番 顧客の検討段階と、営業が確認すべき条件
使う場面 新人への説明、業務手順の確認 案件管理、KPI分析、営業育成、会議・1on1
リスト作成→電話→訪問→提案 初回接触→課題確認→提案合意→受注
成果につながる要素 やるべき作業を抜け漏れなく行う どの案件を、どの条件で、次へ進めるか判断する

フローだけを整えても、案件の質や次の一手が判断できなければ、属人化は残ります。プロセスには、フェーズの名前だけでなく、進行条件、確認項目、次回アクション、見る数字を入れる必要があります。

営業プロセスを可視化するメリット

営業プロセスが共通化されると、案件の進捗を見やすくなるだけではありません。営業会議や1on1で話す内容が、感覚論から顧客・案件の事実へ変わります。

得られること 具体的な変化
ボトルネックが分かる 商談は多いのに提案が少ないなど、どの工程に問題があるかを見つけやすくなる
案件レビューの質が上がる 「どうですか」ではなく、「次に誰が何を決めるか」「何が不足しているか」を確認できる
育成が具体的になる 担当者ごとに、どの工程・スキルを支援すべきかが分かる
勝ちパターンを共有できる 成果が出た案件で、どの条件をどの順番で確認したかをチームで言語化できる
売上予測の精度を上げやすい フェーズごとの件数・金額・停滞日数から、将来の見込みを確認しやすくなる

可視化の目的は、すべての案件を同じ進め方にすることではありません。営業ごとの強みを生かしながらも、顧客の意思決定に必要な確認を漏らさず、チームが支援できる状態にすることです。

営業プロセスを作る5つの手順

1. 直近の受注案件と失注案件を並べる

最初から理想のプロセスを作ろうとすると、現場で使われない複雑な仕組みになりがちです。まず、直近の受注案件3〜5件と、失注または長期停滞した案件3〜5件を並べてください。

それぞれについて、「初回接触から受注・失注までに何が起きたか」「どの時点で顧客の課題、決裁関係者、導入時期が分かったか」「次回アクションはいつ決まったか」を確認します。成功案件だけでなく、失注案件を見ることで、プロセスで確認すべき条件が見えます。

2. 顧客の意思決定に沿って4〜6フェーズへ分ける

フェーズを細かくしすぎると入力負荷が増え、粗すぎると課題が見えません。最初は、チームが毎週同じ基準で更新できる4〜6フェーズを目安にします。

フェーズ 顧客側で起きていること 営業側が確認・実行すること
初回接触 自社の提案テーマを認識する 対象条件を満たす相手へ、接点を作る
初回商談 課題と優先度を整理する 困りごと、現状、関係者、検討の背景を聞く
提案準備 解決策を比較するための条件をそろえる 決裁関係者、予算、導入時期、選定基準を確認する
提案・検討 提案を比較し、導入可否を判断する 提案内容、懸念点、次回の判断事項を合意する
受注・引き継ぎ 契約し、導入へ進む 契約条件、開始時期、引き継ぎ情報を整理する

自社の営業では「商談」の意味が複数ある場合もあります。その場合は、初回商談と提案前の商談を分けるなど、顧客の判断に合わせて調整してください。

3. 「次に進める条件」を文章で定義する

プロセスが機能するかどうかは、フェーズ名よりも進行条件で決まります。例えば「提案準備」というフェーズに案件を置いても、何が確認できれば提案に進めるのかが分からなければ、案件の温度感を比較できません。

フェーズ 次に進める条件の例 まだ進めない場合に確認すること
初回接触→初回商談 対象条件を満たす相手と、課題確認を目的とした面談日時が確定した 誰に接触するか、なぜ面談する価値があるか
初回商談→提案準備 課題、関係者、次回の目的が確認できた 課題の優先度、現状の困りごと、関係者の役割
提案準備→提案・検討 提案の範囲、判断条件、導入時期が合意できた 決裁者、予算、比較対象、導入手順
提案・検討→受注 契約条件、意思決定者、開始時期が確認できた 最終的な懸念、社内稟議、契約手続き

条件は、完璧な情報を集めるためのチェックリストではありません。次に進む判断を誤らないための最低条件です。運用を始めてから、案件の実態に合わせて更新してください。

4. 案件を「前へ進める基準」と「戻す基準」を決める

案件管理では、フェーズを前に進める基準だけでなく、戻す・保留にする基準も必要です。担当者の期待だけで案件が上位フェーズに残り続けると、売上予測が楽観的になります。

状態 判断の基準 対応例
前へ進める 次の判断者、判断日、必要な条件が確認できた 次のフェーズへ更新し、次回アクションを登録する
同じフェーズに置く 顧客との次回約束があり、必要な情報を収集中 次回日時と、確認すべき項目を残す
戻す 課題の優先度や導入時期が想定より低い 初回商談または育成対象に戻し、定期接点へ切り替える
保留・失注にする 連絡が取れない、条件が合わない、顧客が見送った 理由を分類して記録し、次の営業活動へ学びを反映する

「保留」や「失注」を担当者の失敗として扱わないことも大切です。早い段階で優先順位を見直せれば、営業は本当に前進している案件へ時間を使えます。

5. フェーズごとに見るKPIと会議の問いを決める

営業プロセスを作ったら、各フェーズで見る数字を決めます。数字は、管理項目を増やすためではなく、どの工程を改善すべきか見つけるために選びます。

フェーズ 見るKPIの例 会議・1on1で確認する問い
初回接触 有効接触数、有効接触率 反応が良い対象企業にはどんな共通点があるか
初回商談 商談数、商談化率 面談に進まない理由は、対象・訴求・タイミングのどこにあるか
提案準備 提案化率、案件滞留日数 課題、関係者、期限のうち何が不足しているか
提案・検討 受注率、提案後の停滞日数 顧客の選定基準と懸念点を確認できているか
受注・引き継ぎ 受注額、受注数、引き継ぎ完了率 受注後に顧客の期待と社内情報をつなげられているか

KPIの具体的な設計方法は、「営業KPIの設計方法|売上から逆算する指標一覧・計算例・週次運用シート」で解説しています。プロセスを先に定義し、その後にフェーズごとのKPIを置くと、数字の意味が明確になります。

スプレッドシートで始める営業プロセス管理シート

SFAやCRMがなくても、最初は共有スプレッドシートで運用を始められます。大切なのはツールの多機能さではなく、入力する項目と更新のルールがチームでそろっていることです。

案件名 顧客名 担当者 現在フェーズ 次に進める条件 次回アクション 次回日時 想定金額 懸念点 更新日
例:営業管理支援 A社 担当者名 提案準備 決裁関係者と導入時期の確認 決裁者同席の面談を調整する 9月10日 100万円 予算枠の確認が未了 9月3日

この表を使う場合は、次の3つだけを運用ルールとして決めてください。

運用ルール 決める内容
更新の締切 例:金曜17時までに、担当者が全案件の次回アクションを更新する
フェーズ変更の基準 例:提案準備から提案・検討へ進めるには、決裁関係者・導入時期・選定条件の3点を確認する
週次レビューの対象 例:フェーズが2週間以上動いていない案件、金額が大きい案件、次回日時がない案件を確認する

週次会議と1on1での使い分け

営業プロセスの情報は、会議と1on1で違う使い方をします。全員が集まる会議では、チームに共通するボトルネックと、支援が必要な注力案件を扱います。個別の1on1では、担当者がどのフェーズで困っているか、次の商談で何を試すかを扱います。

場面 主に扱うこと 目指すアウトプット
営業会議 チームのフェーズ別KPI、共通するボトルネック、注力案件 次週に試すチーム施策、担当、期限
1on1 個人の案件、商談スキル、次に進める条件、支援要望 本人が試す行動、上司が行う支援

営業会議の具体的な進め方は、「営業会議の進め方|60分で『数字の報告会』を改善の意思決定に変えるアジェンダ」を参照してください。個別の案件や数字を育成につなげる質問は、営業1on1の記事で解説します。

営業プロセスの可視化で起こりやすい失敗

フェーズを細かく作りすぎる

フェーズが10段階以上あると、担当者はどこに置くべきか迷い、入力が後回しになります。最初は4〜6段階に絞り、チームの会話に使えるかを確認してから増やしてください。

フェーズ名だけを決め、条件を決めない

「商談」「提案中」といった名称だけでは、担当者によって意味が変わります。次に進める条件と、まだ進めないときに確認することを文章で残します。

更新を営業事務だけに任せる

案件の事実を最も知っているのは担当営業です。入力作業を補助することはあっても、フェーズ、次回アクション、懸念点の更新責任は担当者が持つ必要があります。

プロセスを評価や監視だけに使う

プロセスが人事評価や叱責の材料だけになると、情報がきれいに見えるよう更新され、実態が見えなくなります。会議と1on1では、まず改善と支援のために使うことを明確にしてください。

よくある質問

営業プロセスは全営業担当者で同じにすべきですか?

顧客の検討段階と、次に進める条件は共通化することをおすすめします。一方で、接触方法や提案の見せ方まで完全に同じにする必要はありません。共通の判断基準の上で、担当者の強みを生かすことが重要です。

SFAやCRMを導入しないと可視化できませんか?

できません。最初はスプレッドシートや既存の営業管理表でも始められます。案件数が増えて更新漏れや集計負荷が大きくなったときに、必要な条件と運用ルールが固まった状態でSFAやCRMを検討すると、導入後も使われやすくなります。

どのくらいの頻度でプロセスを見直すべきですか?

案件情報と次回アクションは週次で更新します。フェーズの定義や進行条件そのものは、四半期ごと、または新しい営業戦略・商品・顧客層を扱うタイミングで見直してください。現場で使われない定義を固定しないことが大切です。

まとめ|営業プロセスは、営業を「個人の感覚」から「組織の再現性」へ変える

営業プロセスの可視化では、フェーズを並べるだけでは足りません。顧客側で何が進んだか、次に進める条件は何か、案件を戻す基準は何か、各工程でどの数字を見るかまでを、チームの共通言語にします。

まずは直近の受注・失注案件を振り返り、4〜6フェーズと進行条件を作ってください。その後、共有シートで案件を更新し、会議と1on1で使いながら、実態に合わせて改善します。この積み重ねが、エース依存ではなく、チームで成果を再現する営業組織につながります。

営業が属人化し、案件の進捗や育成課題が見えにくいと感じている方へ
株式会社CsMは、営業プロセスの可視化、営業KPI、1on1、営業会議をつなぎ、営業組織が自走できる状態を目指して伴走支援を行っています。自社の営業プロセスをどこから整えるべきか迷う場合は、無料相談をご利用ください。情報収集から始めたい方は、ホワイトペーパーもご覧いただけます。

上部へスクロール

このコラムが気になった方へ