営業力を強化し、組織を持続的に成長させたいと願う経営者の皆様にとって、「営業会議」はどのような位置づけでしょうか。
「会議のための会議になっている」 「集まっても数字の報告だけで、何も新しいことが決まらない」 「優秀な営業担当者は個々で動いた方が早い。会議の時間はムダだ」
特に、日々の業務に追われる中で、このように感じ、営業会議そのものを実施していない、あるいは「やってはいるが形骸化している」という企業は少なくないかもしれません。
確かに、目的が曖昧で非生産的な会議は、貴重な営業活動の時間を奪う「コスト」でしかありません。しかし、もし貴社が「営業の組織化」や「人材育成」に課題を感じているのであれば、「営業会議をやらない」という選択、あるいは「機能不全のまま放置する」という選択は、組織の成長にとって非常に大きな機会を失っている可能性があります。
本コラムでは、なぜ今こそ「営業会議」が重要なのか、その本質的な価値と、成果を生み出し続ける組織が実践している会議のあり方について、具体的にお伝えします。
なぜ、営業会議は「ムダ」だと思われてしまうのか
多くの経営者や営業責任者が「営業会議はムダだ」と感じてしまう背景には、共通点があります。それは、会議が「過去の確認」や「責任の追及」の場になってしまっているケースです。
1. 「数字の報告会」になっている マネージャーが資料を読み上げ、各メンバーが今月の進捗数字を発表する。そして、目標に達していないメンバーに対して「なぜできていないんだ」「今月はどうするんだ」と一方的に詰問する。メンバーは下を向き、沈黙するばかり。これでは、会議の時間はただの「緊張の時間」であり、未来に向けた建設的なアイデアは何も生まれません。
2. 「犯人捜し」の場になっている 大きな失注があった場合や、チームの目標が未達だった場合。「誰のせいでこうなったのか」という過去の責任追及に終始してしまう会議です。もちろん、原因の分析は必要ですが、それが個人への非難に変わった瞬間、メンバーは保身に走り、正直な情報共有(=失敗事例の共有)が行われなくなります。
3. 特定の個人の「武勇伝」の場になっている いわゆるトップセールスと呼ばれる、成果を上げている営業担当者が「自分はこうやって成功した」という体験談を一方的に語る場です。その内容が他のメンバーでも再現可能なノウハウとして共有されるなら価値がありますが、単なる精神論や個人の特殊なスキルに依存した話ばかりでは、他のメンバーは「あの人だからできるんだ」と冷めてしまうだけです。これは、組織としての営業力の底上げには繋がりません。
4. 目的が曖昧なまま、時間が浪費される 「とりあえず週に一度集まっている」だけで、その会議で「何を決定するのか」「どのような状態になれば成功なのか」が明確でないケースです。議論は発散するばかりで何も決まらず、時間だけが過ぎていく。これでは「会議のために営業活動の時間を削られた」という不満だけが残ります。
このような会議であれば、経営者が「やらない方がマシだ」と判断するのも無理はありません。しかし、問題は「会議そのもの」にあるのではなく、その「会議の目的とやり方」にあるのです。
成長する組織にとっての営業会議の「本当の価値」
では、成果を上げ、成長し続けている組織は、営業会議をどのような場として活用しているのでしょうか。
彼らにとって営業会議とは、「過去の数字を確認する場」ではなく、**「組織の知恵を結集し、未来の具体的な行動を決める場」**です。
価値1:組織全体の「現在地」と「目的地」を合わせる 個々の営業担当者が自分の担当顧客だけを見てバラバラに動いていては、組織としての力は発揮できません。 「今、チーム全体として目標に対してどの位置にいるのか」「市場や顧客の反応はどうか」「経営戦略と現場の動きにズレはないか」 これらを定期的に全員で確認し、目線を合わせることで、組織全体が同じ方向を向いて進むことができます。これは、経営者の皆様が描くビジョンを現場の活動に落とし込むための、非常に重要な時間です。
価値2:個人の「経験」を組織の「資産」に変える 営業活動は、成功と失敗の連続です。その一つひとつの経験は、個人のもので終わらせてはなりません。 「なぜ、A社は受注できたのか? 決め手はどこにあったのか?」 「なぜ、B社は失注したのか? どの段階でボタンを掛け違えたのか?」 営業会議は、この「なぜ」を深掘りする場です。うまくいった事例の背景にある「成功要因」を全員で分析し、言語化することで、それは個人の感覚的なノウハウから、「組織の勝ちパターン」という再現可能な資産に変わります。同様に、失敗事例も隠さずに共有し、その原因を分析することで、「組織として避けるべき行動」が明確になります。
価値3:メンバーの「成長」を促す 会議は、メンバーが日々の活動で直面している「生きた課題」をテーブルの上に出し、上司や同僚から具体的な助言をもらう絶好の機会です。 「今、こういう案件でつまずいている」 「このお客様への次のアプローチ方法に悩んでいる」 こうした悩みを安心して発言できる環境(心理的安全性)があれば、メンバーは一人で抱え込む必要がなくなります。 また、マネージャーは一方的に答えを「教える」だけではありません。「君はどうすればよいと思うか?」と問いかけ、メンバー自身に考えさせ、答えを引き出す役割も担います。このプロセスこそが、メンバーの思考力を鍛え、主体的な成長を促します。
価値4:次の「具体的な一歩」を決める 会議で最も重要なのは、「何を話したか」ではなく、「何を決めたか」です。 「現状がわかった」「課題も共有できた」で終わらせては意味がありません。 「では、その課題を解決するために、今週、具体的に何を試してみようか」 「C社へのアプローチは、来週までに〇〇の資料を準備して、こういう切り口で提案してみよう」 会議の最後には、必ず「次の具体的な行動(ネクストアクション)」を明確にし、誰がいつまでに実行するかを全員で合意します。「頑張ります」といった曖昧な精神論ではなく、具体的な一歩を決めること。これが、日々の営業活動の質を着実に高めていきます。
「価値ある営業会議」を実現するための3つのポイント
では、どうすれば「ムダな会議」を「価値ある会議」に変えることができるのでしょうか。明日からでも始められる3つのポイントをご紹介します。
ポイント1:会議の「目的」を全員で共有する 最も基本的なことですが、最も重要なことです。会議の冒頭で、「今日の会議の目的は何か」「終了時に、どのような状態になっていれば成功か」を参加者全員で明確に共有してください。
(例)
- ×「今週の進捗確認会議」
- ○「今週の最重要案件3件について、受注確度を上げるための具体的な戦略を決める会議」
- ○「新商品の初期アプローチにおける顧客の反応を共有し、トークスクリプトの改善点を3つ見つける会議」
目的が明確になれば、議論が脱線しそうになった時に「その話は今日の目的と合っていますか?」と軌道修正ができます。
ポイント2:議論の土台として「データ(事実)」を用いる 「最近、お客様の反応が鈍い気がする」「なんとなく、あの業界は厳しそうだ」といった、感覚的・属人的な議論は不毛です。 「先週の新規アポ獲得数は何件だったのか」 「商談から見積もり提出に至った割合(商談化率)は先月と比べてどう変化したか」 「どの営業プロセスで時間がかかっているのか」
まずは、客観的なデータ(事実)を全員が見える状態にすることがスタートです。データという「共通言語」を持つことで、感情論ではなく、「どこに問題があり、どこにてこ入れすべきか」という本質的な議論が可能になります。
ポイント3:マネージャーの役割は「主役」ではなく「支援者」 価値ある会議において、マネージャーは演説する主役ではありません。メンバーという主役たちが、最高のパフォーマンスを発揮できるようにサポートする「進行役」であり「支援者」です。
- メンバー全員に発言を促し、意見を引き出す(問いかける)。
- 出てきた意見を整理し、議論が目的に沿って進むよう導く。
- 時間内に結論(=次の具体的な一歩)が出るようにファシリテーションする。
そして何より、メンバーが「困っている」と安心して言える雰囲気を作ることが重要です。メンバーが発した課題や失敗を非難せず、「どうすれば解決できるか」を一緒に考える支援者としての姿勢が、組織の知恵を引き出します。
(補足) こうした会議での活発な議論は、日々のコミュニケーションが土台となります。特に、マネージャーとメンバーが定期的に行う1対1の面談(1on1ミーティング)などで、個々の状況や悩みを把握し、信頼関係を築いておくことが、会議の場での本音の議論や、主体的な発言を促すことにも繋がります。
まとめ
営業会議を「やらない」という選択、あるいは「形骸化したまま放置する」という選択は、組織が本来持っているはずの知恵やノウハウ、そして成長の機会を、みすみす捨ててしまっていることと同義です。
正しく機能する営業会議は、単なる進捗管理の場ではありません。 それは、**個々の営業担当者の経験を「組織の資産」に変え、メンバー一人ひとりが「昨日より今日、成長できている」と実感できる「学びの場」であり、組織全体で「次の一手」を生み出し続ける「作戦会議室」**です。
そして、そのような会議を通じてこそ、メンバーは「自分もチームの成果に貢献できている」という実感を持つことができます。
もし今、貴社の営業会議がうまく機能していないと感じているのであれば、まずは「何のために、その会議をやっているのか?」という原点を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
「会議の重要性は理解できるが、自社だけでやり方を変えるのは難しい」 「日々の業務に追われて、会議の設計や仕組み化まで手が回らない」 「そもそも、議論の土台となるデータが整理されておらず、何から手をつければいいか分からない」
もし、そのようなお悩みを抱えていらっしゃる経営者様がいらっしゃいましたら、一度、貴社の現状についてお話をお聞かせいただけませんでしょうか。私たちが何かお力になれることがあるかもしれません。
