営業部門の離職率が半分に!社員が「辞めない組織」を作るために必要なこと

「手塩にかけて育てたと思った営業社員が、また辞めてしまった」 「営業部門の離職率がなかなか下がらず、採用と育成のコストばかりがかさんでいる」 「営業は『個人の力』が重要だから、人の入れ替わりは仕方がないと諦めている」

経営者や営業責任者の皆様にとって、営業部門の人材流出は深刻な悩みではないでしょうか。

営業社員一人の退職は、単なる採用コストの損失にとどまりません。これまで築き上げてきた顧客との関係性の断絶、ノウハウの流出、そして何より、残された社員のモチベーション低下という、目に見えない大きな損失を組織にもたらします。

多くの経営者は、「最近の若手は忍耐力がない」「営業という仕事の厳しさについてこられない本人の問題だ」と考えてしまうかもしれません。

しかし、もし貴社の営業部門の離職率が業界平均と比べて高いのであれば、それは個人の「やる気」や「適性」の問題ではなく、社員が力を発揮しにくい「組織の構造」そのものに原因がある可能性が極めて高いのです。

本日は、営業社員が「辞めたい」と感じる本当の理由を深掘りし、「個人の頑張り」に依存する組織から脱却し、社員が定着し、育っていく組織を作るために必要な考え方について解説します。

なぜ、営業社員は「辞めたい」と感じるのか?

給与や待遇面での不満はもちろんですが、それ以上に営業社員の心を折ってしまう要因は、大きく分けて以下の3つにあります。

1. 孤独感と「どうすれば売れるか」が分からない不安

営業という仕事は、本質的に孤独です。顧客と対峙するのは自分一人。成果が出ない時、「悪いのは全て自分だ」と抱え込みがちです。

特に、成果を上げているトップセールスのやり方が「あの人だからできる」特別なものになっており、組織内で共有されていない場合、若手や中堅社員は「何を真似すればよいか分からない」状態に陥ります。

結果(売上)だけを管理され、プロセス(行動)を見てもらえない環境では、成果が出ない時に「頑張りが足りない」と精神論で片付けられてしまいます。どうすれば成果が出るのか、その具体的な道筋が見えないまま走り続けることは、想像以上に心を消耗させます。

2.「成長している実感」が持てない

人は「自分は成長している」と感じられる環境であれば、困難な仕事にも立ち向かえます。

しかし、日々の業務に追われ、「今月も目標達成できなかった」「上司に叱責された」という経験ばかりが続くと、自己肯定感が下がっていきます。

「この会社にいても、自分は成長できないのではないか」 「このままここで時間を過ごして良いのだろうか」

このような疑念が生まれると、社員は自分の将来性を求め、外の世界(転職市場)に目を向け始めます。

3. 評価やフィードバックへの不透明感

「上司の感覚だけで評価されている気がする」 「成果を出しても出さなくても、フィードバックが変わらない」

自分が日々行っている努力や工夫が、客観的にどう評価されているのか分からない状態は、社員のモチベーションを著しく低下させます。

特にマネージャーが多忙で、部下一人ひとりの行動を把握できていない場合、フィードバックは曖昧になりがちです。これでは、社員は何を改善すれば評価されるのか分からず、組織への信頼を失っていきます。

「辞めない組織」への転換点:「個」から「組織」への視点移動

では、これらの「孤独感」「成長の停滞」「評価の不透明感」を解消し、社員が「ここで働き続けたい」と思える組織を作るには、何が必要でしょうか。

それは、特定の個人の才能や頑張りに依存する組織運営から脱却し、「組織の仕組み」によって人を支え、育てるという発想への転換です。

ステップ1:営業活動の「見える化」

まず取り組むべきは、営業活動の「見える化」です。 ここで言う「見える化」とは、単にSFA(営業支援ツール)を導入することではありません。売上や契約件数といった「結果」だけを見るのではなく、「結果に至るまでのプロセス」を客観的な事実として把握することです。

  • 今月、誰が、何件の商談を行ったのか
  • 商談から見積提示に至った割合(プロセス進捗率)はどれくらいか
  • 失注した案件の主な理由は何か

これらのプロセスデータを客観的に把握することで、初めて組織としての課題が見えてきます。

例えば、Aさんは商談数は多いのに契約率が低い、Bさんは商談数は少ないが契約率は非常に高い、といった事実が分かれば、Aさんには「商談の質」の改善を、Bさんには「商談数の創出」の工夫を、と具体的な対策が打てます。

何より、「見えている」という事実は、「自分は一人ではない」「上司は自分の行動を理解してくれている」という社員の安心感につながります。

ステップ2:「振り返り」の文化を根付かせる

データが「見える化」されたら、次に行うのは「振り返り」です。ここで鍵となるのが、**マネージャーとメンバーによる定期的な1on1(1対1の面談)**です。

ただし、この1on1を「結果を問い詰める場」にしてはいけません。 「なぜ目標を達成できなかったんだ?」と詰問するのではなく、「見える化」された客観的なデータ(事実)を元に、「次、どうすればもっと良くなるか」を一緒に考える対話の場とするのです。

  • 「今週の活動データを見ると、A社への提案準備に時間がかかっているようだね。どこで悩んでいる?」
  • 「B社への提案、うまくいった要因は何だと思う?そのやり方を他の案件でも試せないかな?」

このように、事実に基づいた対話は、マネージャーにとっては「感覚」ではない具体的な指導を可能にし、メンバーにとっては「精神論」ではない的確なアドバイスを得る機会となります。

この「振り返り」の積み重ねこそが、社員にとっての**「成長実感」**そのものになります。「先週できなかったことが、今週はできるようになった」という小さな成功体験が、仕事への意欲と組織への信頼を育てます。

ステップ3:「個性を活かす」ための仕組みづくり

「見える化」と「振り返り」が進むと、メンバー一人ひとりの「得意・不得意」といった個性も見えてきます。

  • ロジカルな説明が得意な人
  • 顧客との関係構築がうまい人
  • 緻密な資料作成が得意な人

組織の役割は、全員を同じ「トップセールス」の型にはめることではありません。 「誰がやっても一定の成果が出る」営業の基本的な流れ(仕組み)を整備した上で、個々の強みをどのように発揮させれば、チームとして最大の成果を出せるかを考えることです。

基本的な仕組みがあるからこそ、個性が活かされます。 仕組みの上で、ある人は新規開拓を、ある人は既存顧客の深掘りを、と役割分担を最適化することで、社員は「自分はこの組織で役に立っている(貢献実感)」「自分らしさを発揮できている(自己表現)」と感じることができます。

これが、社員が「辞めない」理由、ひいては「この組織で頑張りたい」と思う理由になるのです。

まとめ

営業社員の離職率が高い組織は、「個人の頑張り」に依存しています。そこでは社員は孤独であり、成長実感を得られません。

一方、社員が辞めない組織は、「仕組み」によって社員を支えます。 活動を「見える化」し、客観的な事実に基づいた「振り返り(1on1)」を徹底することで、社員は自らの成長を実感し、自分の個性を活かして組織に貢献していると感じることができます。

営業の仕組みが整備され、マネージャーが「管理」ではなく「育成」のための対話を行えるようになった時、組織は大きく変わります。

「営業の組織作りがうまくいかない」 「社員の育成方法や、効果的な1on1のやり方が分からない」

もし、貴社がそのような課題を抱え、営業組織の変革の必要性を感じていらっしゃるなら、一度、現在の営業の「仕組み」そのものを見直してみてはいかがでしょうか。