営業成績優秀者を管理職として部下を持たせる前に考えるべきこと:営業実績は管理職の適性とは限らない

はじめに

近年、企業における人材育成の重要性がますます高まっています。しかし、意欲が高く、営業成績優秀な社員をそのまま管理職に登用するケースが依然として見られます。しかし、これは大きなリスクを伴う可能性があるのです。

本稿では、営業実績だけで部下を持たせ、育成を任せるのは避けるべき理由について、西郷隆盛の言葉「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」を踏まえながら、考察していきます。

1. 営業実績と管理能力は必ずしも比例しない

営業職と管理職は、求められるスキルや経験が大きく異なります。営業職は、目標達成のために高いコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、そして顧客との信頼関係構築能力が求められます。一方、管理職は、チームマネジメント、目標設定、育成、評価、さらには組織運営に関する幅広い知識と経験が必要となります。

確かに、営業成績優秀な社員は、高いコミュニケーション能力や目標達成力を持っている可能性が高いです。しかし、それがそのままチームをマネジメントし、部下を育成することに繋がるわけではありません。むしろ、優秀なプレイヤーだからこそ、管理職よりもプレイヤーとして活躍した方が、組織全体にとってプラスとなる場合も多くあります。

2. 管理職に向いていない人、やりたくない人を管理職にしない

管理職は、チームを目標達成へと導く責任を負います。そのため、高いリーダーシップ、責任感、そして部下と良好な関係を築くためのコミュニケーション能力が不可欠です。しかし、中には、こうした能力に欠けている人や、そもそも管理職に興味がない人もいます。

そのような人を無理に管理職に登用すると、以下のような問題が起こる可能性があります。

  • チームワークの低下
  • 部下のモチベーション低下
  • 離職率の増加
  • 組織全体の停滞

3. マネージャーはマネジメントに集中させた方がいい

近年、企業では「働き方改革」が推進されています。その中で、マネージャーの役割も大きく変化しています。従来型の「指示・命令」型のマネジメントから、「支援・育成」型のマネジメントへと移行しているのです。

支援・育成型のマネジメントでは、マネージャーは部下の成長を促進し、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献することが求められます。そのため、マネージャー自身が常に学び続け、マネジメントスキルを磨いていく必要があります。

しかし、プレイヤーとしての業務も抱えながらマネジメントを行うのは、非常に困難です。マネージャーはマネジメントに集中し、部下の成長を支援することに専念すべきです。

4. 昇進・昇格と管理職は必ずしも結びついていない

従来の日本企業では、昇進・昇格と管理職が密接に結びついていました。しかし、近年では、管理職以外のキャリアパスも充実しつつあります。専門職としてのキャリアパスや、プロジェクトリーダーとしてのキャリアパスなど、多様なキャリアパスを選択できるようになっています。

重要なのは、個々の社員の能力や志望を活かせるキャリアパスを用意することです。営業職で高い成果を上げている社員が、必ずしも管理職に向いているとは限りません。むしろ、プレイヤーとして更なるスキルアップを目指したいという社員もいるでしょう。

5. 西郷隆盛の言葉「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」

西郷隆盛は、人材登用について以下のような言葉を残しています。

功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ

この言葉は、単に成果を上げた者に報いるだけでなく、人格や能力、そしてリーダーシップを兼ね備えた者にこそ、組織を導く地位を与えるべきだという意味です。

管理職は、組織にとって非常に重要な役割を担っています。だからこそ、実績だけで選ぶのではなく、管理職としての適性や能力、そしてリーダーシップを備えた人材を選ぶことが重要です。

まとめ

営業実績は、社員の評価指標の一つとして重要です。しかし、管理職に向いているかどうかを判断する唯一の基準ではありません。管理職には、チームマネジメント、目標設定、育成、評価、さらには組織運営に関する幅広い知識と経験が必要となります。

組織は、個々の社員の能力や志望を活かせるキャリアパスを用意し、適切な人材を適切な場所に配置することが重要です。西郷隆盛の言葉にあるように、「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」という考えに基づき、人材登用を行うことで、組織全体の活性化を図ることができるでしょう。

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